ダウンサイジングエンジンでも走りはパワフルで軽快
試乗車はガソリン仕様で、2リッター直4ターボエンジンにZF製の8速ATが組み合わせている。「グランドチェロキーL」は、3.6リッターV6エンジンを搭載しているのに対して、標準ボディはいまどきのダウンサイジングエンジンを選択している。ではパワー不足を感じるかといえば、実は3.6リッターV6の最高出力が286psなのに対して、2リッター直4でも272psとわずか14psの差。トルクは344Nmなのに対して、2リッターはターボの強みもあって400Nmとこちらが上回っている。Lと標準で車両重量差が約100kgあるため、2リッターでも不満を感じることなく軽快に走る。高速道路での高速巡航や追い越しで加速する場面でも、とても2リッターとは思えないほどパワフルでストレスなく走行できた。
駆動方式はジープの名にふさわしくもちろんフルタイム4WD。「クォドラトラックⅡ4×4システム」という名のそれは、市街地走行での燃費効率などにも配慮したいわゆるオンデマンド式だ。システムが4WDは不要と判断すれば、自動で2WD(後輪駆動)に切り替え燃料消費を抑制する。走行モードを切り替える「セレクテレインシステム」は、サンド/マッド、スノー、オート、スポーツから選択が可能。ジープだけにかなり本格的なオフロード性能を有してはいるが、都市生活者が使う場面はそう多くはないだろう。通常走行時はオートを選択しておけば効率よく走行することができる。
ADAS(先進運転支援システム)ももちろん最新世代となっており、アダプティブクルーズコントロールや衝突被害軽減ブレーキをはじめ、交差点内での対向車との衝突被害を軽減するインターセクションコリジョンアシストや、ドライバーの疲労や居眠り運転を検知するドライバーアテンションアラートなど数々の機能を搭載。フラッグシップモデルにふさわしい、ワンランク上の装備内容となっている。
アルファ ロメオのプラットフォームに、ダウンサイジング2リッターターボエンジンを搭載と聞くと、ジープも欧州化してしまったかと思うかもしれないが、モダンなインテリアや素直なハンドリングを身につけつつも、鷹揚なアメリカンSUVらしい味わいをしっかりと残している。多国籍自動車メーカー傘下にいるからこそ、ジープはジープらしさとは何かを再確認したうえで、新型モデルの開発に取り組んでいることの証左だろう。
文=藤野太一 写真=茂呂幸正、Stellantisジャパン 構成=iconic