
総額で1700億円もの投資がなされ、さらに進化し続けるダイソン。英国本部の社員や研究員の話を聞くと、現在はシンガポールに本社を置き、世界各地に支社を持つ、まさにグローバル企業に成長した今でも、“やるとなったらとことん追求しないと気が済まない”という、研究し、発明し続けることに興奮する創業者の精神が脈々と受け継がれていることが分かった。

「ダイソンは、“ベストな製品”を提供する企業です。美しいが性能が伴っていない製品、その逆に機能は高いが使い勝手の悪い製品があります。ダイソンの場合はどこかに不満が残る製品は決して市場に出しません。美しいデザインとともに、全ての機能で最高だと言われるものを作りたいのです」
今回、2日間かけて近年のダイソンに関するブリーフィングを受け、研究所を見学、最後にデザインの責任者とシニア・サイエンティストの2人にインタビューした。
ダイソンに勤務して11年というデザイン・マネージャーのケイトン・パテル氏は1987年ロンドン生まれの34歳。この2日間、ダイソンの英国本部で過ごし、大食堂で大勢の社員とともにいただいたランチ(これがヘルシーなメニューが豊富でびっくり。ここでもクオリティに対するこだわりを感じさせた)に舌鼓を打ったが、1993年設立の若い企業に比例して、とにかくスタッフが若い。ファッションセンスも様々で、社内には自由な気風が満ちている。パテル氏もそんなダイソンのデザイナーに相応しい、自由で聡明な頭脳の持ち主だ。そして口を開くと、どんどん創業者ジェームズ氏譲りの“熱”がその言葉にこもってゆく。
「うちでは社員とその家族に試供品を社員でモニター利用するんです。実際に家庭で使って、その感想を集め、その本当の使い勝手を知るというわけです。そして集まった意見と感想に従い、改良に改良を重ねます」