ラグジュアリーさを備えた最高峰のスポーツモデル
コンペティションなんていう勇ましい名前から、ガチガチな乗り心地や爆音を想像していると拍子抜けしてしまう。エンジンやシャシー、ステアリングなどをコンフォート(COMFORT)、スポーツ(SPORT)、スポーツプラスと設定変更できる。またエキゾーストの音量も切り替えが可能だ。近年の電子制御の進化がそれを見事に体現しているのだ。
中でも注目なのが、Mモデルに初めて採用されたインテグレーテッド・ブレーキ・システムだ。これもバイ・ワイヤ化によって実現したものだが、より快適性を重視した「COMFORT」モードや、よりレスポンスを重視した「SPORT」モードと、ドライバーは任意に車両を減速させるのに必要なブレーキペダルの踏み込み量を変更することが可能。これによって濡れている路面や、横方向の加速度が大きい、ブレーキ温度が高い、といったサーキット走行を想定したシーンでも、ブレーキフィールを一定に保ち、常に正確な制動力が得られるという。なんともMモデルらしい走ることに徹底的にこだわった装備だ。
M8コンペティションはそもそもの8シリーズがもつスムースで快適なラグジュアリークーペの乗り味と、最高峰のスポーツモデルとしてサーキット走行までをこなすM8の本分と、その二面性を破綻することなくあわせもっている。いまどきのハイブリッドな千両役者であり、カメレオン俳優でもある、というわけだ。
文/藤野太一 写真/茂呂幸正、ビー・エム・ダブリュー 編集/iconic