東京五輪のゴルフ日本代表ヘッドコーチを務める丸山茂樹プロが、オリンピアンと語らいながらライフスタイルを深掘りする本企画。第9回のゲストは、2004年アテネ五輪の女子マラソンで金メダルを獲得した野口みずきさん。気さくで茶目っ気たっぷりの素顔にフィーチャーした。
【Fun for Win】VOL.09
東京五輪ゴルフ日本代表ヘッドコーチ 丸山茂樹×
アテネ五輪女子マラソン金メダリスト 野口みずき[後編]
丸山茂樹さん
1969年生まれ。千葉出身。日本ツアー通算10勝。2000年よりアメリカツアーに参戦して3勝。2002年には伊澤利光プロとのペアでゴルフワールドカップを制覇。現在はゴルフ中継の解説者や様々なメディアで活躍する傍ら、ジュニアの育成にも尽力。東京五輪ではリオデジャネイロ五輪に続き、ゴルフ日本代表のヘッドコーチを務める。愛称は“マルちゃん”。
野口みずきさん
1978年生まれ。三重県出身。数々のハーフマラソンを制し“ハーフの女王”として名を馳せた後、フルマラソンに転向。力強いストライド走法で2004年アテネ五輪にて金メダルを獲得。翌年のベルリンマラソンでは、未だ破られていない日本記録2時間19分12秒で優勝。’16年の引退後は岩谷産業陸上部のアドバイザーや、地元の伊勢市観光大使も務める。
理想は選手たちに寄り添う良きお姉さんでありたい
丸山 指導者と選手との理想的な関係とは、どのようなものだと思われますか? 今は指導されたりも?
野口 大学の監督などにもお誘いいただきましたが、現在は岩谷産業の陸上部でアドバイザーをしています。指導者というよりは、選手の姉のような感覚で接していますね。
丸山 その際、心掛けていらっしゃることはありますか?
野口 上からものを言うのではなく、「私はこう思うよ」と選手に寄り添う助言を心掛けています。
丸山 東京五輪のゴルフ日本代表ヘッドコーチである僕も、同じ心構えですよ。現役時代の監督やコーチはどんな方でしたか?
野口 父と兄のような存在でしたね。練習中は厳しくアドバイス、練習後はたわいもないことを話してストレスを解放してくれる、家族のような関係でした。
丸山 毎日一緒にごはんを食べても楽しい人だと、居心地が良いですよね。ちなみにアテネ五輪前、監督とコーチからはどんなアドバイスを?
野口 25キロ地点でスパートをかけなさいと。
丸山 マラソンコースは42.195キロですから、先は長い。なぜ25キロ地点だったんですか?
野口 アテネのコースは最初が上り坂で、30キロ地点を越えると下り坂になるんです。私は上り坂の方が得意なので、多くの選手が苦しむ上り坂で勝負に出れば優勝できるという目論見でした。実際、25キロ地点で先頭集団を抜けてからはゴールまで一人旅でした。
丸山 独走なんて、さぞかし気持ちいいでしょうね。
野口 夕方のスタートだったので、ゴールする頃にはすっかり暗くなっていました。外灯で白く照らされた道に導かれ、ゴールのパナシナイコ競技場に吸い込まれると、五輪のマークが光り輝いて見えたんです。その瞬間、スタンディングオベーションの大歓声に包まれて。
丸山 すごいなあ!
野口 痺れましたね、ゴールしたくなかったぐらい。
丸山 僕ならテープを切る直前に笑いを取りたい。もちろん、タイムは止めてもらって(笑)。