先代エントリーモデルより軽量かつパワフル
エンジンは鋭過ぎず十分に素早いレスポンス、かつ綺麗に吹け上がる回転フィールだ。ステアリングは切り始めは穏やかだが的確でナチュラルな感触。下からの分厚いトルク感といい、往年の小排気量ストレート6にも似た、運動体としてはオールドスタイルの味わいといえる。ちなみにツーリングのエンジンの方は、最大トルク発生域を1300-4300rpmと、同じ最大トルク値ながらセダンの1350-4000rpmより、僅かに低めつつワイドカバレッジとしている。重量が多少嵩む分、のんびりとはしているが荷物積載時も伸びるであろう、そういう芸の細かさなのだ。
全長と全幅はまったく同じ、ルーフレールの関係でツーリングより30mmほど低い318iのサルーンにも乗ったが、そのキャラの違いに驚いた。ルーフという上モノが小さい分、明らかに軽快感が増すのは予想の範囲内だったが、どこから削り出したかという、エンジンパワーの伸びや小気味よさ、俊敏さすら感じられたのだ。
実質的に318iは、先代3シリーズに設定されていた直列3気筒1.5リッターターボの318iスポーツの代替ともいえる。一方で、ACC(アダプティブ・クルーズ コントロール)や衝突回避・被害軽減ブレーキといったADAS機能を省いていた現行世代のエントリーモデルであった320i SEが廃されたので、これらの装備を標準化アップデートしつつエンジンのスペックを下げたという見方もできる。
よって価格的にはADAS分、もしくは1気筒が増えた分、微増した感はあるが、BMW318iはサルーンで1540kgと、136psで1550㎏だった先代318iスポーツより僅かとはいえ軽量かつパワフルではある。1気筒増えて10kg軽いというのは、ボディやシャシーの側でかなりの軽量化が実現されているがゆえ。それこそ現行3シリーズのポテンシャルの高さでもある。今回は試せなかった高速道路での渋滞時ハンズオフアシスト機能も備わったものの、3シリーズのドライバーズカーとしての飽くなき追求は、そうではないところに見てとれた。
文/南陽一浩 写真/ビー・エム・ダブリュー 編集/iconic