難解極まりない超複雑な機械式時計の仕組みを“優しく”解説する『超弩級 複雑腕時計図鑑』がMEN’S EX特別編集によって発売に。ここでは、その中身をピックアップしてご紹介する。
4大複雑機構の基礎知識(4)
伝統的な複雑機構を象徴するパーペチュアルカレンダーとトゥールビヨン、ミニッツリピーター、スプリットセコンド・クロノグラフの仕組みを知れば、搭載モデルのスゴサと深さが理解できる。
スプリットセコンド・クロノグラフ
Split second Chronagraph

2本のクロノグラフ秒針で異なるラップタイムを計測
スプリットとは、分割の意。クロノグラフ秒針とスプリット秒針、2つの秒積算計針を同軸に備え、2つのラップタイムが計測できる複雑機構だ。クロノグラフが作動すると2本は重なって運針し、スプリットセコンド用のボタンを押すとその針だけが“分かれて”停止するから、スプリットセコンド・クロノグラフ。
上のパテック フィリップの例では、スプリットセコンド用のモジュールも専用のコラムホイール式とし、その操作ボタンはリューズ同軸に備わっている。そしてクロノグラフ秒車の上にスプリット秒針車とそのハートカムとが重なる設計だ。スプリットセコンド用ボタンを押すと、コラムホイールに設置された二叉のクランプがスプリット秒針車を挟んで動きを停止させる仕組み。その際、スプリット秒針用のハートカムはクロノグラフ車と一緒に回り続ける。再びスプリットセコンド用ボタンを押すと、スプリット秒針車はハートカムが進んだ位置まで瞬時に戻り、クロノグラフ秒針と重なり、一緒に運針する。垂直クラッチに似た構造で、2本の秒積算計針の一方をコントロールしているのだが、スムーズに働かせるためには、高い技術が必要だ。