「33歳で求道者のような生活! 侍・ハネタクの未来に期待します」(丸山さん)
スロバキア人コーチと二人三脚 10年来の頼れる兄貴的存在です
丸山 選手とコーチの理想的な関係についても、お聞かせ願えますか?
羽根田 現在のミラン・クバンコーチは、スロバキアに渡ってから10年のつきあいになる兄貴的存在。知り合った当初は現役選手で、彼の引退と僕が新しいコーチを探すタイミングが重なって僕から指導をお願いしました。だから彼にとって僕は一番弟子なんです。
丸山 コーチには何を求めますか?技術、実績、話しやすさなど決め手は様々だと思いますが。
羽根田 選手のレベルによって、相応しいコーチは異なると思います。僕はさぼることもなく、自主的にメニューを組み立てて練習できる段階にあるので、黙って寄り添ってくれるほうがありがたい。五輪のように大きな大会でも、どっしり構えて揺るがないようなコーチを求めます。結構いるんです、急にあれこれやりたがるコーチや、土壇場に現れて手助けをしたがるようなコーチも。
丸山 東京五輪のゴルフ日本代表ヘッドコーチである僕も、全く同じ考えですね。選手が質問してくるときは本人にも迷いがあるので、想定しておいたあらゆる回答の中から適切なアドバイスをします。ただ、選手が質問してこないときは、本人の中に答えがあるので黙って見守るようにします。僕の父もそうでした。余計な口出しを一切しない。もちろん、選手が好調のときは乗せまくりますよ(笑)。
「リオで結果を出してこい」 ライバル選手は見抜いていた
丸山 羽根田さんの出現で一躍注目競技になったカヌー・スラロームですが、今後ファンを拡大していくためには、どんなことが必要だと思われますか?
羽根田 まずはとにかく一つ成績を残すことが大切。カヌー界だけではなく、日本中の誰からも評価されるような絶対的な評価です。それは僕の場合、やはり五輪でメダルを獲ることでした。
丸山 確かに羽根田さんがメダルを獲ったことで、メディアの注目度も急上昇して、僕自身も競技の存在を強く意識しました。
羽根田 カヌーの先輩方が五輪でメダルを獲るために長年奮闘してきたなかで、自分は最後のひと押しをさせてもらっただけ。それで競技の認知度が高まったことは、とても喜ばしく思います。
丸山 リオ五輪では銅メダルが決まった瞬間、水上で涙する羽根田さんを祝福するようにライバルが集まってきたシーンも印象的でした。
羽根田 あの試合前、次は東京五輪があるという気の緩みが、どこかにあったんでしょうね。僕が憧れるスロバキアのミハル・マルティカン選手がそれを見抜いて、「リオで結果を出してこい」と背中を押してくれたことも、メダル獲得に繋がりました。
丸山 それも遠い国に単身乗り込んだ気概が評価されたからですよ。東京五輪に向けて、今はどんな思いですか?
羽根田 自国開催も巡り合わせのようなものを感じています。代表内定は維持されているので、とにかく全力で臨むだけですね。
丸山 夢と希望にあふれる現役選手はすばらしい。侍・ハネタクには東京五輪でも思う存分、暴れてほしいなと思います。
[MEN’S EX 2020年9月号の記事を再構成]撮影/筒井義昭 スタイリング/松純〈丸山さん〉ヘアメイク/古口精樹〈羽根田さん〉 文/間中美希子 撮影協力/Bar S 資生堂パーラー