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“正統派”とは異なるスポーティな4ドアサルーン

フルモデルチェンジし第二世代となったコンパクト4ドアクーペのCLAクラス。現行型Cクラスに加えて新たに追加された新型Aクラスセダンまで含めてボディサイズを比較してみるとなかなか面白い。

まず新型CLAクラスのボディサイズは現行型Cクラスとほとんど同じだ。おそらくこれで次期型のCクラスは世界のトレンドに併せてもう少し大きくなるに違いない。新開発Aクラスセダンのボディサイズがこれまた絶妙で、旧型CLAクラスより全長で少し短い。高さは新型CLAクラスと同じだが、幅は少し狭い。CLAのようなクーペスタイルではなくコンサバな3ボックスサルーンとしている。

メルセデス・ベンツCLAクラス
ボディサイズは全長4695×全幅1830×全高1430mm、旧型より全幅が50mm広げられた。ホイールベースは2730mm。

メルセデス・ベンツはCLAクラスを4ドアクーペと明快に謳っており、正統派セダンのAクラスセダンとは違うカテゴリーだという主張だ。全幅が広がっているのはトレッド(車輪と車輪の距離)をワイドにしたことが原因だが、このことからAクラスを起点としたコンパクトモデルシリーズ(随分増えた)のなかでもデザイン性を重視しつつ走りもスポーティに振ったということが分かる。

CLAクラスの日本仕様には2ボディタイプ&3グレード(エンジンタイプ)の用意がある。ボディタイプは4ドアクーペと4ドアシューティングブレーク(上級モデルでは廃止されてしまったから今となっては貴重だ)で、それぞれにディーゼルターボ(200d)、ガソリンターボ(250 4MATIC)、そして高性能AMGエンジン(45S 4MATIC+)を組み合わせることができる。全て2リッター直4エンジン。ちなみに、CLAクラスでは全グレードともリアマルチリンクサスペンション仕様だ。(※ラインナップは取材時のもの)

ともかくかのメルセデス・ベンツがデザインを最優先したというだけあって(20世紀には考えられないことだ! )、FFベースであるにも関わらず、前後タイヤの位置関係は良好で、旧型にはあったリアの寸詰まり感も解消された。クーペとしても鑑賞に耐えうるシルエットだと思う。

そのせいで、使い勝手こそ悪くはないけれどもトランクの積載容量スペックは下がってしまった。真っ当な居住性と積載性(といってもコンパクトサイズだから限度はある)を望むならAクラスセダンも用意しましたしどうぞ、という戦略だろう。ひょっとするとCLAクラスをよりいっそうデザインスペシャルティなモデルとして成立させるためにも、コンパクトサイズのセダンが必要だったのかも知れない。

いっきにモダンとなったインテリアも含め、最も悔しがっているのは旧型オーナーに違いない。

CLAクラスのインテリア
基本的なデザインをAクラスから踏襲するインテリア。コクピットディスプレイとタッチスクリーンが並ぶ。Sクラス同等の運転支援機能、インテリジェントドライブはオプション設定とされた。

エントリーモデルの200dで十二分

メルセデス・ベンツAMG45S 4MATICは別格(性能を考えると実は大変お買い得なのだが)だとして、新型CLAクラスをひと目見て気に入り、いざ買ってみようかと思ったときガソリン4WDの250を選ぶのか、はたまたディーゼルFFの200か、その車両価格差は約60万円と決して小さくないのだけれど実に悩ましい。

安いほうの200dでも実用上は全く問題ない、というよりもむしろ十二分だと思う。本来なら1.4リッターディーゼルターボの180dであっても十分(Aクラスセダンにその設定がある)なボディサイズだから、それよりも分厚いトルク(320Nm)を発揮する2リッターターボを積んだとなれば、走りの快活さは容易に想像できるはず。実際乗ってみれば、右アシにちょっと力を込めただけで低速域からずいぶんと豊かなトルクが溢れ出て、どんな場面においても力強い走りをみせてくれた。そのスタイリッシュなデザインによく見合ったパフォーマンスだと思う。

なかでもハンドリング性能の確かさが印象的だった。ワイドトラックのおかげだろうか。ワインディングロードなどではAクラスに比べてずいぶんしっかりと路面をくわえこむ印象がある。ステアリングホイールからの手応えもよく、気をよくしたドライバーは自信をもってスポーティに攻めこんでいける。反面、低速域で乗り心地が悪化する場面もあって少々気になった。タイヤサイズの影響もあるだろう。

普段乗りの上質さまで求めたいという向きはガソリンターボの250を選ぶべきだ。4WD(4MATIC)ということもあって、よりしっかりしっとりとしたライドクォリティを得ることができる。FFの200dでもマルチリンクリアサスを採用するからリアタイヤの追随性そのものは決して悪くないのだけれど、4MATICにはクラスを超えた重厚感さえ感じられる。高速道路をクルージングする場合でもその安定安心感において4MATICモデルのほうがはるかに優れていた。

メルセデス・ベンツはデザインを最優先したというけれど車高はCクラスやAクラスセダンと同じだから、少なくともフロントシートに座る限り不都合はない。旧型CLAクラスよりもずいぶんと快適だ。

デザイン重視したことでマイナスの影響があったのはリアシートなどのスペースなのだが、前述したように、そのあたりを重視したいという向きには、よりお買い得なAクラスセダンという手もあるし、いっそモデル末期で熟れに熟れた現行型Cクラスを大幅値引きで手に入れるというチャンスもあるだろう。あえてFRサルーンのCクラスでメルセデスの正統派ライドクオリティを味わってみるというのもまた一興である。



文/西川 純 写真/郡 大二郎 編集/iconic

<p>旧型からトレッドを前/63mm、後/55mm拡大させ、メルセデス・ベンツのFFプラットフォームモデルで最もスポーティなドライビング特性を獲得しているという。</p>

旧型からトレッドを前/63mm、後/55mm拡大させ、メルセデス・ベンツのFFプラットフォームモデルで最もスポーティなドライビング特性を獲得しているという。

<p>2リッター直噴ディーゼルターボを搭載するCLA200dの価格は472万円。なおCLAとしては2020年2月に136ps/200Nmの1.4リッター直噴ターボを搭載した新たな廉価版のCLA180が登場したばかり、価格は446万円とされた。</p>

2リッター直噴ディーゼルターボを搭載するCLA200dの価格は472万円。なおCLAとしては2020年2月に136ps/200Nmの1.4リッター直噴ターボを搭載した新たな廉価版のCLA180が登場したばかり、価格は446万円とされた。

<p>AMGレザーエクスクルーシブパッケージを選択すると、こちらのヘッドレスト一体型のシートが備わる。</p>

AMGレザーエクスクルーシブパッケージを選択すると、こちらのヘッドレスト一体型のシートが備わる。

<p>4:2:4分割可倒式を採用した後席シート。旧型より後席部の室内幅が44m拡大された(前席部は35mm拡大)。</p>

4:2:4分割可倒式を採用した後席シート。旧型より後席部の室内幅が44m拡大された(前席部は35mm拡大)。

<p>軽量化のためシリンダーブロックにアルミを採用した直4直噴ディーゼルターボ。8速デュアルクラッチトランスミッションの8G-DCTが組み合わせられる。</p>

軽量化のためシリンダーブロックにアルミを採用した直4直噴ディーゼルターボ。8速デュアルクラッチトランスミッションの8G-DCTが組み合わせられる。

<p>ラゲージは460リッターとなり、Aクラスセダン(420リッター)より容量的には大きい。ちなみにAクラスハッチバックは370〜最大1210リッター。</p>

ラゲージは460リッターとなり、Aクラスセダン(420リッター)より容量的には大きい。ちなみにAクラスハッチバックは370〜最大1210リッター。

<p>こちらはCLA250 4MATIC(534万円)。可変トルク配分型4WD「4MATIC」を搭載する。これは通常はほぼ100%前輪駆動で走行、ラフロードやコーナリング時で後輪に適切なトルクを配分するもの。</p>

こちらはCLA250 4MATIC(534万円)。可変トルク配分型4WD「4MATIC」を搭載する。これは通常はほぼ100%前輪駆動で走行、ラフロードやコーナリング時で後輪に適切なトルクを配分するもの。

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