SIHH 2018 DAY 1

演出も、技術力も、見応えたっぷり!
極薄ドレスウォッチと言えば、多くの人が思い浮かべるブランドが「ピアジェ」だろう。
1960年代から’70年代にかけ、ピアジェの名を高めたのが、極薄ムーブメントを内包した、フィット感の良いドレスウォッチだったことを、僕のようなオールドボーイは覚えている。中でも「アルティプラノ」のコレクションは、腕時計の薄さを極限にまで突き詰めた傑作だった。
今年発表の「アルティプラノ アルティメート・オートマティック」は、手巻きだった前作(900P)を、ムーブメント外周を回転するペリフェラルローターによって巻き上げる、自動巻き上げとしたニューモデルである。
このモデルは、時計の裏蓋そのものをムーブメントのメインプレートとしたもので、それゆえ極限的な薄さに時計を仕上げるために、ペリフェラルローターを採用したのだとその合理性に納得した。
文字盤側にテンプや歯車のすべてが見えていて、メカニカル感あふれるデザインだが、その薄さや洗練された設計によってシックな仕上がりを見せてくれるのは、薄型時計に精通したピアジェならではのものだと思う。
また、かつての薄型時計全盛期は、珊瑚や翡翠、オニキス、キャッツアイなどの半貴石を用いた文字盤を与えられた、エキゾティックなドレスウォッチが最盛期だった。その時代を彷彿とさせる、半貴石文字盤を持つ「エクストリームリー・ピアジェ・アーティー」(Extremely Piaget Arty)というモデルも作られた。
丸みを帯びたクッションケースは、細かなステップベゼルで飾られたもので、今年のモデルには鮮やかなグリーンのマラカイトや、ラピスラズリの文字盤が用意されていて、なかなかのクラシック感あふれる時計となっている。
実はこのケースデザインの原型になった時計を、かつてはポップアートの巨匠、アンディ・ウォーホルも愛用したのも有名なエピソードだろう。
Profile
松山 猛 Takeshi Matsuyama
1946年京都生まれ。作家、作詞家、編集者。MEN’S EX本誌創刊以前の1980年代からスイス機械式時計のもの作りに注目し、取材、評論を続ける。SIHHは初回から欠かさず取材を重ね、今年で28回目。
撮影/岸田克法 文/松山 猛