一緒にゼロから立ち上げ若い人に成功体験を

Profile
石橋 寧 Yasushi Ishibashi
1951年生まれ。ACRO取締役会長 ブランドプロデューサー。1974年にカネボウに入社。大手国産化粧品メーカーを経て2008年にACROを設立。2009年にTHREEを発表。
加藤ちなみに、今までに閃きが枯渇して、窮地に立ったことは、ないんでしょうか……?
石橋今のところはありません。旅をしている一人の時に閃くことが多いです。ただ窮地という意味では、THREEがデビューしたのはリーマンショックの直後で、化粧品業界の売り上げが初めて前年割れをした頃でした。その後、東日本大震災が起こって、今度は東京の百貨店が全部照明を落として、化粧品を買う雰囲気じゃなくなった。だから、最初の4、5年は厳しかったです。「永遠に赤字のままで黒字にならないんじゃないか」と思ったこともありましたが「絶対にいける」と自分に言い聞かせて乗り切りました。
加藤10年目にして新たに3ブランドを立ち上げるという展開は、想定内だったんでしょうか?
石橋本当は売り上げ規模と利益も出てきたので、そろそろ悠々自適の老後生活をと思っていたんですが、親会社の要望もあり、再び新ブランドの立ち上げに着手することに。そうしたら思いついたのが3ブランドで、1ブランドを成功させるのに5年ずつかかるとおじいさんになってしまうので、一遍にやろうと。若い人たちに成功体験をさせたい気持ちもありました。一緒に新しいものをゼロから立ち上げたいなと。
加藤若い社員と接するときに気を付けていることはありますか?
石橋「できない理由でなく、できる理由だけを聞きたい」と伝えています。新しいことをしようとすると、日本の企業の中間管理職以上は失敗が怖くて、できない理由を並べて突き返す。でも、それをやってしまうと若者や新しい提案をした人たちは萎縮してしまう。そもそもチャレンジは成功か失敗しかない。だから、失敗したとしても次に活かせばいい。何もしなければ退化していくだけです。だから「若いうちにどんどんチャレンジしろ。失敗しても会社が潰れるようなことはないから」と言っています。
加藤なんて頼もしい!
石橋究極を言えば、上の人間も責任を取ればいいんです。そこから取り戻せばいい話で、何もしないで守りに入るよりはマシですよ。
加藤私も石橋さんのような上司の下で働いてみたいです。
石橋お話したようにブランドも増えて、異業種からのエントリーも含めさらに人材も募集中なので、いつでもお待ちしています(笑)。
カトMEMO
■とにかく、”くすぐり上手”!
■楽しんで仕事をしているのが伝われば、下の人も惹かれる。
■モノを生み出していく上で、”現場主義”の大切さ。
■「できない理由」より「できる理由」を聞くこと。
THREE AOYAMA

「朝」「体感」「気づき」という3つのキーワードを掲げ、THREEのフィロソフィーを体現したフラッグシップショップ。ショップを中心にスパと「REVIVE(再生する)KITCHEN」と題したキッチンを併設。中庭には商品の原料であるティーツリーなども植栽。
住所:東京都港区北青山3-12-13 1F・2F
TEL:03-6419-7511(ショップ)
http://aoyama.threecosmetics.com
[MEN’S EX 2018年3月号の記事を再構成]
撮影/前 康輔 スタイリング/斉藤くみ(SIGNO) ヘアメイク/陶山恵美(roi) 文/岡田有加(edit81) d撮影協力/モルテーニ東京