FR+幌のオープンスポーツという
王道スタイルでライバルに挑戦
BMW Z4はリアルスポーツカーに立ち戻らなければならなかった。
開発責任者は今回のモデルチェンジにおける基本コンセプトについて、そう言い切った。
先代のZ4といえば、ロングノーズ&ショートデッキの伝統的なクーペデザインとはかくあるべきというくらいにエレガントでクラシカルな美しさをもつ、リトラクタブルハードトップのオープン2シーターモデルだった。志向的には、まったくもってグランツーリズモ、つまりGTカーである。
けれどもマーケティング的には、GTオープンスポーツカーよりもリアルスポーツカーの方が、昨今では需要が見込めるということらしい。しかも、ファブリックソフトトップの素材進化も著しく、今やハードトップ仕様と同等の静粛性も手に入れている。先々代のZ4と同様のソフトトップオープンカーへと回帰することに、ためらう必要などなかったというわけだ。
新型Z4といえばトヨタ・スープラとの共同開発ばかり話題になっている。当然ながら設計の初期段階では密接なやりとりがあったことだろう。とはいえ、ブランドの志向性の違いに加えてクーペとオープンカーというキャラクターの差もあったから、その後の開発はそれぞれが独自に行なっているはず。単純にスープラのオープンモデルがZ4、というわけではない。もっとも、Z4がリアルスポーツを目指すことになった背景には、当然、スープラ開発陣の影がちらつく。スープラもまたリアルスポーツFRを標榜したと言われているからだ。
とにかく、Z4もまたリアルスポーツオープンを目指すことになった。ライバルはずばり、ポルシェ ボクスター。ミドシップのスポーツカーを敵に回すというのだから中途ハンパなFRスポーツカーでは太刀打ちできるはずもない。なるほど、新型Z4の仕様を仔細に検討してみれば、リアルスポーツを目指したという開発陣の思いの丈がそこかしこに現れていた。
例えばフロントアクスルには高性能モデルのM4と全く同じシステム=Wジョイントのスプリングストラットを採用しており、加えてMの強者たちと同じくミシュランの高性能タイヤ・パイロットスポーツを履く。