
ポルシェのすべてのモデルに共通するもの。それはセダンであっても、SUVであってもポルシェが創るすべてのクルマは”スポーツカー”としての資質をもっているということに他ならない。ポルシェは自らそれらのモデルを”4ドアスポーツカー”と謳っている。いまのポルシェにはカイエンとマカンという大小2種類のSUVモデルがありパワフルなガソリン車だけでなく、プラグインハイブリッドモデルなども存在している。それらを乗り継ぎながら、陽光に恵まれた福島県内を旅した。
vol.3 マカンGTS

ポルシェのグレード構成には、いくつかの法則性がある。ベースモデルがあり、改良を加えパワーを増した「S」があり、さらにターボでパワーを増強した「ターボ」がある。これは911をはじめとするすべてのポルシェモデルに共通するものだ。
そして近年はここに「GTS」が加えられた。その名のルーツは1963年にデビューしたレーシングカーの「904 カレラGTS」に遡る。現在のモデルでは「S」と「ターボ」のあいだを埋める、ピュアスポーツモデルという位置づけだ。
マカン GTSのディテール(写真13枚)
マカンGTSのスポーツシートに腰かけ、ステアリングに手をのばす。そして肩とステアリング上端の高さが揃うように調整する。実はこれ、あるポルシェの開発者に教えてもらったのだが、ポルシェが考えるスポーティだけれど、とても心地の良い運転姿勢の条件の1つだ。操作しやすく無駄な力もいらないので長距離でも疲れにくい。
GTSはベースモデルと比べると車高が15mm低められており明らかに硬いイメージを受ける。しかし、決して不快なわけではない。ステアリングを切り込んだときの車体の動き方はまさにスポーツカーそのものだ。ボディの大柄なSUVがこんな動きをするなんて、といい意味で期待を裏切られる。野球好きにしか分からない例えで申し訳ないが、巨体ながら三遊間の難しいゴロを軽快に捌く元巨人の村田選手のようだ。オプションのエアサスペンションが装着されていれば、オフロードなどボタン1つで車高を上下することも可能だ。

福島の旅の最後に訪れたのは、裏磐梯の五色沼近くにある諸橋近代美術館。中世のドイツの馬小屋をイメージしたという建物はとても美しく、スペインの芸術家サルバドール・ダリの作品収蔵数は世界でも指折りのものとして知られる。有名な「やわらかい時計」が描かれた版画や彫刻などもあり、休憩がてら立ち寄るにはぴったりの場所だ。
ちなみにGTSは、機能だけでなく内外装にも専用パーツの数々が奢られている。エクステリア各部にブラックのアクセントが配され、アルミホイールなどもブラックアウトされているが、エレガントなゴールド系のパラジウムメタリックとの組み合わせによってシックにまとまっている。

こうしてバリエーションを増やしていくことで、今やポルシェにおいてSUVモデルはビジネスの大黒柱になった。ちなみに昨年のポルシェの世界生産台数は約24万台、そのうち約17万台、なんと7割がSUVなのだ。さらに、先日の東京モーターショーでは新型のカイエンも発表された。また、加えてパナメーラの”シューティングブレーク(ワゴン)”といえるスポーツツーリスモも追加された。そしてこれはまだ数年先の話になるだろうが、今年マカンのベースとなるアウディQ5が新型になったことで、次期型マカンの登場も期待される。
ポルシェの”4ドアスポーツカー”攻勢はますます加速していくだろう。
撮影/柳田由人 文/藤野太一 構成/iconic