東京の洒落者にもその名が知られる九州の名セレクトショップは、熊本県で創業し、福岡、長崎に出店を続け、今年38年を迎えた。地元、九州の文化に馴染む品揃えやショップの展開は、郷土愛とともに”グローカル”を生き抜く証明でもあるかのようだ。
今月のいい店(ショップ)
熊本 – ブルック
教えてくれる人
ファッションジャーナリスト
矢部克已さん
メンズファッション誌編集部を経て渡伊。本国の服飾文化を吸収して帰国。ピッティ・ウォモを欠かさずに取材。常に「ファッションの現場」が気になるいま、この連載に力を込める。
クラシックなスタイルを提案した発祥の地。その歴史を受け継ぐ店舗
九州で34店舗を展開する「ベイブルック」の秘密とは
熊本城のお膝元、上通りアーケードに最初のブティックを開いたのが「ベイブルック」の始まり。なんと発祥は、喫茶店だった。
【歴史】
1970年代後半、コーヒーの味と香りにこだわった喫茶店「MUC/マック」を開いた。一日に何度も訪れる顧客にも恵まれ、大賑わいだったが、当時コーヒーは1杯80円。仕事は充実していても、事業としての難しさを感じた原田賢治社長は、自分が好きなファッションの世界を模索した。若い頃、神戸・元町の名店「ボンド」の常連でもあった原田社長は、「ブルックス ブラザーズ」のブレザーやボタンダウンシャツ、「トムソン」のパンツなどを、1980年9月25日、喫茶店の片隅に並べたのだ。この日を創業記念日としている。3年弱を経て、喫茶店を本格的に改装し、「ベイブルック」と名づけたセレクトショップが滑り出した。