2012年公開の『踊る大捜査線 THE FINAL 新たなる希望』。完結かと思われた同作から14年の歳月を経て、主人公の刑事、青島俊作が帰ってくる!! M.E.の表紙にもそれ以来のご登場となる織田裕二さんが、新たな「踊る」を巡る思いを語る。
「本気でぶつかり合ったときの掛け算の面白さ、それが欲しい」
和久平八郎の言葉が胸に沁みる年齢になって
M.E. 「踊る大捜査線」の青島俊作が14年ぶりに帰ってきます。MEの表紙にご登場頂くのもそれ以来。当時「これが最後だと郷愁に浸ってはいられない。また裏切りますからね」という言葉がありましたが、そうなりました。
織田 これが最後だっていうことに自分では納得がいってなかったんじゃないですか。かと言って、去る者は追わずじゃないですけど、じたばたしても一人じゃできないので。ただプロデューサーには「和久さんぐらいの年齢になった青島俊作を見たくないですか」って言った記憶はあります。今回の青島俊作は、自分と同年齢の58歳。
M.E. いかりや長介さんが演じたベテラン刑事の和久平八郎は、初登場の時点で定年間近の60歳という設定でした。
織田 「踊る」は大好きな作品ですが、もう続けられないかなと思っていました。ですが2024年に『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』が続けて公開され、本編に青島は登場しませんが、エンドロール後にちらっと出てくる。それって「踊る」もやります、ってことでしょ。
M.E. そして実現した今作、58歳の青島をどう演じられたのでしょう?
織田 もう自分より年上はほぼいなくなって、かろうじて同期がいるぐらいで、あとは下ばっかり。キャリア組の室井さんに引っ張られて湾岸署から警視庁本部に移り、二人三脚で警察機構を変えようというテーマに取り組んでいましたが、室井さんが去った後、孤独になってしまったのかな。本庁の水が合わず、爪痕も残せていない。捜査支援分析センターでビデオ解析とかをやっていて、半分引退しているような立場。それが警視庁刑事部捜査第一課に着任し、新しい仲間と動き出す。
M.E. 新しい仲間は必然的に若手になってきます。趣里さん演じる芝田ひばり、白洲 迅さん演じる美浦秋……。
織田 新しい面々も「踊る」の面白さを理解して入ってきてくれていました。以前は監督から「いつもの芝居よりちょっとやり過ぎなぐらいトライして欲しい」って言われていました。でも、やり過ぎの芝居ではダメだってことをみんなが理解していた。ドヒャーっていうコメディではなく、真剣なところもあれば、敢えて笑わせようとしなくても台詞の間でクスッと笑える、そういう上質なコメディのノリがつくり上げられてきたと思っています。まあ今回もやり過ぎな部分もありますが。
先輩、後輩とともに生み出す俳優ならではの掛け算の快感
M.E. 織田さんご自身は、この14年間で俳優としてどんな変化が?
織田 先輩方とやるのが大好きだったので、先輩が少なくなってきたのは寂しいですね。俳優の仕事って、同じ土俵に立って戦い始めたら年齢は関係ない。それでいて一緒に協力し合う場面もあるし、ケース・バイ・ケース。変な職業だけど、そこが面白くもある。若いときは先輩の胸を借りるってキレイな言い方するけど、実は有名で立派な先輩方を喰ってやろう、倒してやろうって意気込んで芝居を仕掛けていたわけです。でも結局、先輩方を大好きになって、倒すどころか甘えてしまったり。それをちゃんと受けてくれる人たちがいた。何がいいかって、そこで出る掛け算の面白さ。足し算では大したことない。本気でぶつかり合い、集中力が高まっているときに生まれる掛け算ならではの快感が欲しいんです。毎回やろうとしてできるものでもないですし。そう甘くはない。
M.E. 今は織田さんが、若手にかかってこられる立場になられました。
織田 かかってきて欲しいんですよ。でも、かかってきた方だよね、空回りだと無駄になってしまうし。一緒に掛け算を生み出したいんです。
M.E. 個人的なファッションや趣味の部分での変化はありますか? 以前、スティーブ・マックイーンのカッコよさに憧れるとおっしゃっていましたが。
織田 そこは変わりませんね。松田優作さん、石原裕次郎さん、コンバットのサンダース軍曹を演じたヴィック・モローも好きでした。中学生の頃は『コンバットマガジン』や『Gun』誌を愛読し、モデルガンもいっぱい持っていました。そういう僕自身のエキスが青島俊作のキャラクターにも入っていて、それが匂ってくるような小道具を美術部が用意してくれます。最初、美術部の人が青島のデスク上に置くものをいろいろ用意してくれましたが、僕が全部却下して「銀色のチープな灰皿に愛用のタバコのシケモクを剣山みたいにして置いてください」とか、いろいろ注文をつけたら、美術部もそれでひらめいたらしくて、次からは引き出しにコンバットマガジンやGun誌は入ってるし、他のキャラクターもこうしようってなって。それを「美術部の暴走」と呼んでいましたが、触発されて演出部も役者もみんな暴走し合って(笑)、より面白くなっていきましたね。
M.E. M.E.の表紙の初登場が39歳のとき。パイプを嗜んでいて、年齢を重ねてパイプが似合う白髪に早くなりたいとおっしゃっていましたが……。
織田 パイプの香りは相変わらず好きですが、最近あまり吸っていなくて、シガリロ程度。髪は染めずにそのままです。シワにしても、もう和久さんの年になって、劣化するのが当たり前なんだから、そのままの方が面白いじゃないですか。最近のテーマは“頑張らない”。和久さんは「疲れるほど働くな」が口癖で、若い青島に「正義感に燃えて突っ走るな」「周りを見て、バディと一緒にやれ」と言ってくれていました。今、そんな言葉が、すごく胸に沁みるようになってきましたね。
踊る大捜査線 N.E.W. メトロポリスを駆け抜けろ!
東京都内で誘拐事件が発生。犯人は爆破予告とともに身代金の運搬役に青島を指名。一方、3Dプリンター拳銃による連続殺人事件も発生。毒性ウィルスを街にばらまくという、犯人からの脅迫状が警視庁に届く。難事件を解決するべく、若手バディとともに青島が激走‼ 張り巡らされた伏線や、数々の懐かしのキャラの登場も見逃せない。脚本:君塚良一 監督:本広克行 プロデュース:亀山千広 出演:織田裕二 趣里 白洲 迅 佐藤二朗 他。2026年9月18日公開。
織田 裕二 YUJI ODA
1967年神奈川県生まれ。1987年映画『湘南爆走族』でデビュー。1991年のドラマ『東京ラブストーリー』のカンチ役、1993年の『振り返れば奴がいる』の司馬先生役などで人気を不動のものに。刑事・青島俊作役で主演の「踊る大捜査線」シリーズは、1997年にドラマからスタートし、映画では今回が5作目。「踊る」の主題歌に起用された『Love Somebody』をはじめとする楽曲制作や、世界陸上のメインキャスターとしても活躍。
[MEN’S EX Autumn 2026の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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