名品に見る、メゾンの本質
本質的価値を備えた一流メゾンには、その歴史や哲学を脈々と受け継ぐマスターピースが必ず存在する。シーズンを重ねてデザインは変わっても、本質の輝きは普遍。そんな美しき名品を過去と現在の視点を交えながら紹介しよう。
Ferragamo(フェラガモ)の「トラメッザ」シューズ

革新的技術で叶えた“夢の靴”
南イタリアの郊外で生まれたサルヴァトーレ・フェラガモが靴作りを始めたのは、10歳にも満たない少年時代。裸一貫からのスタートだったが、並外れた才覚と努力でめきめきと成長。渡米して自らの靴店を開くと、ハリウッド俳優たちの間で評判を呼んだ。やがてグレタ・ガルボやマリリン・モンローといった大スターにも靴を製作するようになり、“夢の靴職人”と称されるようになる。そんな歴史を今に受け靴ぐのが「トラメッザ」シリーズだ。フォルムの美しさはひと目でわかるが、秘密は見えないところにある。インソールとアウトソールの間にコルクではなく、柔らかいレザーを重ね合わせて仕込んでいるのだ。これにより抜群のしなやかさを叶えつつ、重心が靴の真ん中にくることで履き疲れを軽減。驚くほどの快適さを実現したのである。デザインは極めてエレガント。それでいて履き心地は圧倒的にコンフォート。まさに“夢の靴”だ。
継承し続ける技と美意識

卓越したクラフツマンシップを継承するフェラガモ。ラグジュアリーの根本には職人の技と美意識が不可欠であることを改めて教えてくれる。
[MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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