ラグジュアリーこそ、本質主義でまといたい
世界に冠たるラグジュアリーブランド。そのまばゆいばかりの輝きに、私たちはいつも魅せられてきた。しかし、絢爛たる煌めきの根源にあるものに想いを致すことはあるだろうか。 そこには、メゾンが大切に守り抜いてきた技がある。果てしない素材への探究心がある。着る者の魂に響く哲学がある。クワイエットラグジュアリー、ミニマルラグジュアリーといった言葉がモードの世界を席巻して数年が経つ。それはまさに、世界がラグジュアリーの本質に注目していることの証明ではないだろうか。今こそ、新しい視点でラグジュアリーの価値を考えてみたい。
dunhill(ダンヒル)

現代に甦るイングリッシュ・ドレープの品格
ダンヒルは今、最も注目を集める英国ブランドといっても過言ではないかもしれない。サイモン・ホロウェイが就任してからの3シーズン、そのコレクションはブリティッシュスタイルがもつタイムレスな魅力を鮮やかに描き出してきた。往年の英国ファンが膝を打ち、若者たちはクラシックの魅力に強く引き込まれる。そんなルック揃いである。今季フィーチャーするのは“イングリッシュ・ドレープ”。紳士服の黄金期といわれる1930年代に英国で生まれ、今なお当地のエレガンスを象徴するエッセンスである。胸周りにスペースを作り、柔らかにたわませることによって生まれる紳士の余裕。そこから自然に絞られたウエストラインに滲む、上品な色気。その佇まいはまるで、ウィンザー公が現代に甦ったかのようだ。そんな普遍のエレガンスに、シャツ・タートルニット・スカーフを重ねた無造作な装いが刺激を添える。モダンクラシックとは、こういうことだ。
[MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)
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