オールデンの歴史が幕を開けたのは1884年のこと。創業者のチャールズ・H・オールデンがマサチューセッツ州ミドルボロウに設立した靴工場は当初、おもにオーダー靴を生産していたが、1892年に工場を移転拡張し、勢力を拡大。1931年にはオールデン氏が引退し、経営はターロウ家が引き継ぐことになったが(現社長のアーサー・ターロウはその4代目)、’51年には医療用矯正靴の分野に進出するなど、さらなる成長を遂げていく。
快適さを追求して生まれた"実用性の美"こそがオールデンの魅力の源流だ
’50~’60年代に入ると、バリー、モディファイドなどといった傑作ラストが次々と完成する。そしてこのころから、ブルックス ブラザーズのローファーの生産を任されることになる。これをきっかけとして、日本にもオールデンの名が知れ渡ることになるのだが、ここでもうひとつ忘れてはならないのが、パリのカリスマバイヤー、ピエール・フルニエの存在だ。氏が’70年代にNYの医療用靴店で見つけたVチップを気に入り、自身のショップであるエミスフェールとのコラボ靴を製作。これにより、ローファーと並ぶ名作としてモディファイドラストのVチップが脚光を浴びるようになった。さらにマルセル・ラサンスやトム・ブラウンにも認められ、モードからクラシックまで、幅広い層に支持されるブランドになったのである。
オールデンのポリシーは、”履き心地のよい、高品質な靴作り”。この理念自体は、ほかの本格靴メーカーにも共通する至極一般的なものだが、オールデンは履き心地の向上のために、モディファイドラストをはじめとする非常にユニークなラストを開発した。実用性を追求して生まれた独特の形状が、結果的にファッションアイコンとして服飾業界を魅了し、オールデンを米国靴の代表格にまで押し上げたのである。オールデンの魅力は究極の機能美であると言っても過言ではないのだ。
盟友ホーウィン社とオールデンの結束
今や世界にわずかしかないコードバンタンナー。そのひとつが、オールデンの供給元であるホーウィン社だ。オールデンとのつながりは非常に緊密で、’60年代後半~’70年代前半にコードバン需要が減り、生産中止の危機に陥った際、オールデンがコードバンを2年分買い取って救済したという逸話もある。オールデン=コードバンのイメージを支えるのは、両社の揺るぎない信頼関係にほかならない。