職人文化を守り、育て、世界へ発信! 「レ・マーニ・ディ・ナポリ」が導くナポリ仕立ての新章

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職人文化を守り、育て、世界へ発信!
「レ・マーニ・ディ・ナポリ」が導くナポリ仕立ての新章

個人主義のナポリの職人たちが愛する街のために手を取り合い、未来へと手仕事をつなぐために生まれた文化プロジェクト「レ・マーニ・ディ・ナポリ(ナポリの手たち)」。2022年の小さな試みは、やがて大きな渦となり、大学と行政を巻き込みながら、職人の技と教育、研究、産業を結ぶ新しい循環を生み出した。若き後継者を育て、伝統と街の未来を紡ぐ。今、ナポリ仕立ての新章が幕を開けたのだ。

「ナポリの職人文化を守り、教育機関や行政との連携を通じて伝統を未来へ継承し、さらなる発展のために尽力しています」

Damiano Annunnziato

サルトリア ダルクオーレ レ・マーニ・ディ・ナポリ
ゼネラル ディレクター
Damiano Annunnziato(ダミアーノ・アンヌンツィアート氏)

1970年生まれ。レ・マーニ・ディ・ナポリの発起人として2022年の設立時から副会長を務め、舵取り役として協会を牽引。多大な功績が認められ、先 月よりゼネラル ディレクター。

「ナポリの職人文化は街のアイデンティティであり、経済発展の原動力です。市はその推進者となるのです」

Gaetano Manfredi

ナポリ市長
Gaetano Manfredi(ガエターノ・マンフレディ氏)

1964年生まれ。工学博士。国立フェデリコ2世ナポリ大学学長、コンテ政権での大学・研究大臣を経て、2021年よりナポリ市長。教育・研究・文化政策に精通し、都市再生と若者支援に注力。

ナポリの手が未来を紡ぐ。伝統と知を結ぶ新しい継承のかたち

職人に誇りが芽生え若者に夢を与える存在に

かつては互いに独立した存在として歩んできたナポリの職人たちだが、今、彼らの間に確かな連帯が芽生えつつある。互いの間にある壁を取り払い、街の未来を見据えて動き始めたのだ。その変化を導いたのが、2022年に始動した文化プロジェクト「レ・マーニ・ディ・ナポリ」である。

サルトリア文化の都ナポリでは、職人の技そのものは今も健在だ。しかし、大量生産や市場構造の変化により工房の数は減り、職人という職業が、長らく“魅力的な未来像”として見えにくくなっていた。若い後継者も育たず、伝統の技は消滅の危機に瀕していた。

レ・マーニ・ディ・ナポリは、そうした状況の中で手仕事への夢を取り戻すために生まれた協会だ。職人たちが「もういちど、ナポリの“手”の力を信じよう」と立ち上がったことに、このプロジェクトの意義がある。主導したのは、サルトリア ダルクオーレのダミアーノ・アンヌンツィアート氏だ。「職人の世界は長く孤立していましたが、今は違います。競い合うだけでなく、助け合う時代に入ったのです。互いを認め、学び合い、ナポリ全体の価値を高めていきたい。その意識の変化こそが最大の成果です」

「我々は伝統の技に知の新しい息吹を注ぎ、若者の才能を社会の力へと導くのです」

Matteo Lorito

国立フェデリコ2世ナポリ大学 学長
Matteo Lorito(マッテオ・ロリート氏)

1961年生まれ。植物病理学の専門家。シエナ大学卒業後、米コーネル大学を経てフェデリコ2世ナポリ大学教授。2020年より、同大学学長。学術と地域産業の融合を推進している。

ダミアーノ氏の理念に呼応するように、行政と学術の世界も動き始めた。国立フェデリコ2世ナポリ大学は伝統技術を学問の対象として再評価し、職人文化の継承と地域発展を両立させる教育モデルを構築している。マッテオ・ロリート学長はこう語る。

「学問と手仕事の伝統を結ぶこと。それこそがナポリの未来を拓く鍵です。職人の知識と大学の研究が交わることで、若者に新しい可能性が生まれるのです」

大学では、職人を講師に迎えて学ぶ実践的プログラムの準備が進められている。理論と実践を結びつけるこの試みは、ナポリらしい新たな教育モデルへとなりそうだ。

「伝統と革新の手を結ぶ、世界の中でナポリは新しい未来を描き始めます」

レ・マーニ・ディ・ナポリ会長
Giancarlo Maresca(ジャンカルロ・マレスカ氏)

元イタリア海軍士官、弁護士。紳士クラブ「Cavalleresco Ordine dei Guardiani delle Nove Porte」を率いるグランマエストロ。テーラードの美学を体現する紳士である。

行政の支援もまた重要だ。ガエターノ・マンフレディ市長は「ナポリは自らを信じたときにこそ再生する」と語る。市は職人文化を都市アイデンティティ再生の中心に据え、文化ルートや体験型観光などの仕組みを通じて工房と街を結ぶプロジェクトを推進中だ。

「観光は消費ではなく育みであるべきです。ナポリを訪れる人々に、職人の息づく本当の街を見てもらいたい」と市長は話す。

観光、教育、産業が重なり合うこのビジョンは、ナポリ全体をひとつの大きな工房に変えつつある。「以前は自分の技を守ることに精一杯だった。今は仲間とともに次世代へ手の文化を繋げたい」といった声が職人の間に広がっている。そこには誇りと連帯の意識が滲む。レ・マーニ・ディ・ナポリの活動は単なる経済的連携ではない。「文化としての手仕事」を取り戻すための運動であり、都市再生の根幹に関わる社会的イノベーションだ。伝統の継承と未来への確信。その輪を回す“手”こそが、ナポリを次の世代、新たな時代へと導くのだ。「ナポリの真の力は、その手の中にある」と、ダミアーノ・アンヌンツィアート氏は語る。職人の手が、大学の知が、行政の構想力が、重なり合う。レ・マーニ・ディ・ナポリは、街そのものが自らの未来を形づくる“希望の手”の名である。

 

撮影・コーディネイト・構成・文=藤田雄宏〈AFTERHOURS〉

[MEN’S EX Winter 2026の記事を再構成]

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