時を紡ぐ、日本発ヘリテージホテル
古い建物の記憶を呼び覚まし、旧校舎を再活用することで、その土地の物語に新たな命を吹き込んだホテルがある。趣のある空間に満ちる歴史の鼓動は、訪れるゲストを特別な旅へと誘う。自分らしい豊かさを静かに味わうひとときが、新時代のラグジュアリーを教えてくれる。
静寂の校舎で過ごす大人時間
ザ・ホテル青龍 京都清水[ 京都・清水 ]
“時間の記憶”を読み解き、旧校舎の魅力を現代に翻訳する
昭和8年築の小学校を保存活用して誕生した「ザ・ホテル青龍 京都清水」は、懐かしさと新しさが同居するヘリテージホテルだ。
旧校舎の意匠を残しつつ、モダンなラグジュアリー空間へと再生するプロジェクト。デザイン全般のディレクションを担った「乃村工藝社」の小坂 竜さんは語る。
「この建物自体の魅力を、いかに現代に翻訳できるかが鍵でした。昭和初期の校舎がもつ端正なプロポーションや素材感は、今見ても新しい。だからこそ装飾を加えるより、“時間の記憶”を丁寧に読み解くことを意識しました」

コンバージョンでは、構造や意匠を極力残しながら、照明や素材のトーンを繊細に調整。廊下の手すりの艶や梁の木目といった細部に、かつての学び舎の温もりが息づく。
初めは荒れた校舎を前に戸惑ったというが、それでも八坂の塔を借景にできる唯一無二の立地に希望を見い出し、「見せたい景色は切り取り、見せたくない方向は曇りガラスで光だけを取り入れる」など、視界を巧みに操ることで空間を研ぎ澄ませていった。
元清水小学校の記憶を残した館内で、唯一無二のリセットタイムを
[BEFORE]
[AFTER]
また、再生の過程では、景観規制のもと“増築部分は主張してはいけない”という難題にも直面。チームで議論を重ねた末、 “黒い箱”という潔い解に辿り着いた。
「増築部分をブラックアウトし、旧校舎だけが夜のライトアップで浮かび上がるようにしました。その対比が、静けさを際立たせます」
静寂の校舎で過ごす大人の時間。それは、他では得がたい“時間の深み”を感じる贅沢な体験となる。


乃村工藝社 チーフデザインオフィサー
小坂 竜さん
国内外で話題のレストランやホテル、レジデンスを数多く手掛けるインテリアデザイナー。「ザ・ホテル青龍 京都清水」のディレクションで数々の賞を受賞。
ザ・ホテル青龍 京都清水
京都府京都市東山区清水2-204-2
TEL/075-532-1111
料金/1室2名利用で1泊11万800円~(朝食付き・税サ込)
滞在時間/IN15時~、OUT12時まで
[MEN’S EX Winter 2026の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)





