[ブランド学／2]
― ローマから世界へ ― フェンディが刻む“一族の絆”の奇跡と軌跡

フェンディは一族の精神を保ちながら、世界的な名声を確立した稀有な存在といえる。 創業100年の今、ブランドに受け継がれる美意識と革新が紡ぐ物語を改めて振り返りたい。

家族の価値観と伝統を守りつつ革新とグローバル化を促進する

イタリア、ローマに興きたフェンディは、創業当初から「家族経営」という独自の土壌に根ざし、職人技と家族の信頼関係を融合させることでブランド哲学を育んできた。血縁と絆がブランドの核となる環境は、時代を超えた成長を可能にしたのである。

そして、第二世代にあたるフェンディ家5人姉妹たちは、父母から受け継いだ伝統技術と美意識を発展させ、ブランドの拡大を推し進めた。特に、１９６０年代に登場した、カール・ラガーフェルドとのパートナーシップは、姉妹に宿る一族の感性と、外部デザイナーの斬新な発想を融合させることで、革新的なコレクションを生み出す契機となった。ここに、単なるイタリアンラグジュアリーブランドとは一線を画す、家族経営から生まれた柔軟性と創造力が垣間見える。

家族で始まった経営形態は、迅速な意思決定と柔軟な対応を実現し、ブランドのアイデンティティと品質を守ることに注力しながら、長期的視野で経営を行うことを可能にした。今日、フェンディは世界的ラグジュアリーブランドとしての地位を確立しているが、その成功の根底にはこのイタリア一族のレガシーという独自の経営方針があるのだ。血縁の絆による信頼関係、一族内での創造的な議論、そして歴史と伝統への敬意。これらがブランドを唯一無二の存在に押し上げ、世代を超えて愛され続ける理由となっているのだ。

［MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成］（スタッフクレジットは本誌に記載）
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