ラグジュアリーこそ、本質主義でまといたい

世界に冠たるラグジュアリーブランド。そのまばゆいばかりの輝きに、私たちはいつも魅せられてきた。しかし、絢爛たる煌めきの根源にあるものに想いを致すことはあるだろうか。 そこには、メゾンが大切に守り抜いてきた技がある。果てしない素材への探究心がある。着る者の魂に響く哲学がある。クワイエットラグジュアリー、ミニマルラグジュアリーといった言葉がモードの世界を席巻して数年が経つ。それはまさに、世界がラグジュアリーの本質に注目していることの証明ではないだろうか。今こそ、新しい視点でラグジュアリーの価値を考えてみたい。

Brioni（ブリオーニ）

サルトの技は、美しき所作のために

真に上質な服の妙味は、動きのなかに最高の美しさが発揮されるところにある。ソフトテーラリングのスーツを身にまとって踊る姿に格別のエレガンスを感じるのも、それがダンスの最中にも全く乱れず、むしろ軽やかさや優雅さを際立たせていることに目を奪われるからだ。ブリオーニが今季掲げた「A Movement in Style」というテーマは、まさにそんな本質へ迫るもの。スーツやコートはもちろん、カジュアルなレザーシャツまでがそのテーマを見事体現していることに驚かされる。極上のスエードが描き出すリッチな陰影。体と服の間に空気の層を作り出し、優美なゆらめきを見せるシルエット。無造作に着るほど洒脱が際立つ仕立てのよさ。ブリオーニの原点であるサルトの技を駆使した極上の一着が、さりげない日常の所作をまるで映画のワンシーンのように彩る。服は人間本来の美しさを引き立てるためにある。そんな当たり前の、しかし今こそ見直したい極意に気付かされるはずだ。

［MEN’S EX Autumn 2025の記事を再構成］（スタッフクレジットは本誌に記載）
※表示価格は税込み