【special interview】素材の会社 AGC・平井良典さんの「チャレンジ哲学」とは?

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ビジネス部門



長年、新事業創出の陣頭指揮を取り、CEO就任以降も精力的な活動で1907年に創業した老舗素材メーカーを新たなフェーズへと力強く導いている平井良典さん。その飽くなきチャレンジ精神に敬意を評して本賞を授与する。

イノベーティブな素材開発を力強く推進

AGC 代表取締役 兼 社長執行役員 CEO
平井良典

平井良典さん

平井良典(ひらい・よしのり)

1959年福井県生まれ。東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。87年に旭硝子(現AGC)入社。液晶パネル事業子会社の副社長などを経て、2011年にAGC事業開拓室長。16年CTOとなり、21年1月より現職。京都大学の各員教授として年に数回教壇にも立っている。

“素材の会社AGCは人財のAGCでもあるのです”

見るからに上質な素材感のスーツは、じつは伸縮性に富んだイタリア製の最新ウールジャージーを使用。常にチャレンジングな素材開発を行うAGCのトップに相応しいチョイスだ。そんな平井良典さんに自身のチャレンジ哲学を聞くと、しばし黙考したのち、次のように答えた。

「哲学と言えるかどうかわかりませんが、社内では次の二つのことをよく話します。一つ目は“何も動かないうちから、不可能だと判断しないこと”。できないと思った瞬間に成功確率はゼロになりますから。そして二つ目が“チャレンジは楽しんでやろう”です。新しいことに挑戦すると必ず幾つもの壁に当たります。それをロールプレイングゲーム感覚でひとつひとつクリアしていこうと。楽天的に思われるかもしれませんが、そういう気持ちでいないと体が持たない(笑)。今まで山ほどチャレンジしてきた身としての実感です」

事業開拓室(現事業開拓部)の初代室長をはじめ、いろんな部署や立場で次々とAGCの次の柱となるビジネスを創出してきた人ならではの言葉だろう。

「チャレンジは創業からの当社のカルチャー。ただ21世紀に入って旧来のガラス事業が失速すると、管理主義、前例主義、減点主義に傾いていた。空気を変えるためにも私たちは事業開拓室を作り、いろんなことに挑戦する姿を見せてきたわけです」

AGCは前社長の時代に事業ポートフォリオを“両利き”に転換。既存事業を大切にしながら、戦略的に新事業も探索し続けている。

「素材開発は一時代で完結せず、何代も引き継がれて行われるもの。現在モビリティ、エレクトロニクス、ライフサイエンスの三領域に力を注いでいますが、これらのうち多くの事業は10年、20年前から着手し、それが今ようやく花開きつつある。私も100億円規模の事業を5個以上立ち上げたのですが、自分でゼロからやったのは一つか二つで、他は先人が種を蒔いた。つまり素材開発には、先を見る目が大切なんです」

素材会社として先見の明を持ち続けるには、平井さんは人財への投資が何より重要と語る。先頃話題となった大幅な賃上げもその表れだ。

「日本の企業がこれからグローバルに戦っていくためには人財にお金をかけなければダメ。そして社員を絶対に組織の歯車にしない。自立していない歯車ばかりの組織では、成長はないし新事業は生まれません。社内転職や副業を認めるなど“個”が成長するためのいろんな仕組みもすでに整備しています。素材のAGCは、人財のAGCでもあるんです」

\ 深夜、一人で考える時間を大切にしています /

深夜、一人で考える時間を大切にしています
1日の中で大事にしている時間は? と聞くと、「家族が寝静まった深夜、一人でスコッチ片手に思索する時間」と回答。「自分がもっとも自分らしくいられる貴重な時間です。会社にいるといろんな雑事が多すぎて落ち着いて物事を考えられませんので。ここで仕事上の重要な案件を決断することもあります」

「平井さんにとってのスーツとは?」
真面目だけど固くはないそんなスーツが理想です。

真面目だけど固くはないそんなスーツが理想
スーツ26万4000円〈オーダー価格〉/ヴィターレ・バルベリス・カノニコ × ヒデアキサトウ(大賀) 時計104万5000円/グランドセイコー(セイコーウオッチ お客様相談室) 靴3万9600円/アシックスランウォーク(アシックスジャパンお客様相談室)

VITALE BARBERIS CANONICO × Hideaki Sato(ヴィターレ・バルベリス・カノニコ × ヒデアキサトウ)
エグゼクティブの風格も保つラグジュアリーなジャージースーツ

スーツは日本橋三越本店の「ヒデアキサトウ」で仕立てたもの。伊の「ヴィターレ・バルベリス・カノニコ」がジェットセッター向けに展開する“スーパーソニック”コレクションのジャージー生地を使用し、シックな見映えと裏腹に非常に快適な着心地を叶えている。



※表示価格は税込み
[MEN’S EX Winter 2023の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)

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