
ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第52弾は……?

【中村アーカイブ】 vol.52 / ビームスFのオリジナルジャケット

’80年代のBEAMS Fのオリジナルジャケット。1986年頃に購入しました。
高校や大学の頃からジャケットが好きで着ていましたが、ブレザーやコードレーン、マドラスチェックあたりのいわゆるアイビー的なジャケットは着ていたものの、ガンクラブチェックのジャケットは着たことがありませんでした。
生地屋だった祖父がよくガンクラブチェックのジャケットを着ていたので、それ自体は馴染みがありましたが、20代の自分が着るにはかなり大人っぽくハードルが高いものに感じていました。
1984年の秋にBEAMSにアルバイトで入社すると、当時フレンチアイビーがブームだったこともあり、先輩スタッフがガンクラブチェックのジャケットにホワイトジーンズを合わせるスタイルがとてもお洒落に見えて、自分もいつかこんなスタイルでガンクラブチェックのジャケットを着たいと思うようになりました。
その後夏にコットンのギンガムチェックやカラーのチェックのジャケットを着るようになり、徐々に柄物のジャケットに慣れて着こなす自信が付いた入社2年目の’86年に初めて購入したガンクラブチェックのジャケットがこちらです。
当時のBEAMS Fはまだツイードのヘリンボーンやホームスパンのジャケットの展開が多く、ツイードに比べると軽く柔らかい梳毛を使ったガンクラブチェックはとても洒落て見えました。
当時はガンクラブチェックに柄物のネクタイを合わせるコーディネート力もなかったので、オックスフォードのボタンダウンにリーバイスの505の生成りのカツラギを合わせ、足元はオールデンのタッセルやローファー、フランスのジャンバディーのモンクストラップを合わせ、フレンチアイビー風のコーディネートで着ていました。
アルバイトとして入社して3年目で、やっと憧れていた先輩たちのスタイリングに少し近づいた感じがして嬉しくなったことを今でも覚えています。それから何着チェックのジャケットを購入したかわからないほど私の中でマストアイテムとなりました。
今やチェックのジャケットがBEAMS Fを象徴するアイテムのひとつになり、おそらく世界的に見ても、これほどのバリエーションでチェックのジャケットを毎年展開しているのはBEAMS以外ないのではないかと思います。
このBEAMS Fのオリジナルジャケットはそのルーツにもなったジャケットだと思います。
実はこのジャケット、私が数年着た後に父親に譲りました。今も新潟の生家のクローゼットで保管されていますが、いずれまた私の手元に引き取ろうと思っています。最近父が着なくなったものをやたらと処分するので、絶対に捨てるなと伝えています(笑)。