「金メダルは人生の良き“相棒”周囲を笑顔にします」(野口さん)
野口 優勝したら流行語大賞を狙ったコメントをするつもりでした。同じアテネ五輪で金メダルを獲った、北島康介選手のような。
丸山 歴史に残る名言「チョー気持ちいい」ですね。
野口 でも、ゴールしたら気分が悪くなってしまったんです。
丸山 「チョー気持ち悪い」と言えば受けたかも?
野口 それで優勝インタビューのときに堪えきれず……。
丸山 お口から“キラキラ”が溢れてしまったんですね(笑)。
野口 実は15キロ地点でも気分が悪くなったんですが、先頭集団にいましたし、「世界中にこの映像が流れてしまう!」と我慢したのも、影響していたのかもしれません。
丸山 それだけ身体を酷使されていたんですね。ゴルフではキラキラすることはありませんから。
野口 その後も取り憑かれたように何度も五輪を目指しましたが、故障に悩まされましたね。
丸山 ゴルフのイップスのようなものかもしれませんね。
野口 引退を決めたのは2016年の名古屋ウィメンズマラソン。レース中は沿道のみなさんから「感動をありがとう」と温かい言葉を掛けていただいて、自己ワースト記録でしたが最後まで走り切ることができました。
丸山 アテネのときとは違うキラキラが、目に溢れたんですね。
野口 引退するときも、悔いは残りませんでした。それまでは、たとえ明日心臓が止まっても、今日が最高の日だったと思えるようにと、一日一日を大切に練習してきたので。だから、最高の陸上人生を歩めたのかなと。
丸山 すごい! 「後悔などあろうはずもない」というイチローさんに並ぶ名言が飛び出しました。
マラソン教室でフォーム診断も走る楽しさを伝えていきたい
丸山 野口さんは今後マラソンのファンを増やすために、どんなことが必要だと思われますか?
野口 ランニング教室を増やしていきたいですね。マラソン大会のゲストに呼ばれると、フォームやトレーニング法といった基礎をアドバイスする機会も多いんです。そして競技のイメージとはかけ離れた自分自身の話もすることで、マラソンにより興味を持っていただけるかなとも考えています。
丸山 アテネ五輪を優勝に導いたクマといい、野口さんには面白いお話がたくさんありますからね。
野口 金メダルは私にとって、人生の良き“相棒”。子どもたちに見せると私のことはそれほど知らなくても、みんなの目が輝き出すんです。そんな瞬間に出合うと、金メダルを獲って本当に良かったなと思います。
丸山 やはり五輪には、人の心を動かす力がありますよね。今日はどうもありがとうございました。
[MEN’S EX 2021年2・3月合併号DIGITAL Editionの記事を再構成]
(スタッフクレジットは本誌に記載)