一流のトップは逆境でいかなる言葉と気持ちを大切にし、乗り切ってきたのか。本連載にご登場頂いた方々のなかで、加藤綾子さんの心に特に残っている7名のリーダーたちに今の心得を聞いた。
【加藤綾子の心に響いた 稀代のリーダーたちが贈る 今を乗り切るヒント】
第2回 カレーハウスCoCo壱番屋 創業者 宗次德二さんのコトバ
「助け合い」
長い経営者人生において、私は幸いにも危機を一度も経験していません。創業時こそ自転車操業が続きましたが、それは想定内のことで、若さと情熱でむしろ辛さを楽しみながら、夢中の日々でした。
以来、持ち前の発展志向の下、年間目標を達成するため、経営に身を捧げる思いでひたむきに、関わる人々に喜んで頂こうとの一心でした。
結果として会社は毎期、目標達成、増収増益の経営となりました。私のような三流経営者にしては、まさに奇跡です。経営者としては、会社が発展し、社会や人々のお役に立てることほど、幸せなことはないと実感します。
今般のコロナ危機は、別格としても、世の中真逆の出来事は繰り返されます。それが災害なのか、事件・事故なのか、はたまた病気なのか……予測できない事態に遭遇しても、途端にピンチ・逆境に陥ることがないよう、危機管理をしておくべきです。それが経営者の責務だと思います。
今こそ「経営は自己責任」と肝に命じ、この難局を何としても前向きに乗り越え、晴れてコロナ騒動終息の暁には、なお一層、経営者としての自覚の下、会社の発展に全力投球して頂きたい。そのことこそが、経営者として最高の喜びであり、地域貢献でもあり、何より助け合い社会へと繋がるのです。
カトMEMO
- 常に現場の声、お客様の声を大切にしてきたエピソードが印象的。
- 大変な状況下でも、相手を思いやる心、社会貢献、地域貢献の気持ちを忘れてはいけない。
宗次德二 Tokuji Munetsugu
1948年生まれ。’74年に喫茶店「バッカス」を開業。’78年に愛知県清須市に「カレーハウスCoCo壱番屋」を開店、’82年に壱番屋を設立し、代表取締役に就任。2002年に経営から退き、’03年にNPO法人イエロー・エンジェルを創設し、理事長に就任。ストラディバリウスをはじめ多くの名器を所有し、そのすべてを演奏家に貸与している。
加藤綾子 Ayako Kato
1985年埼玉生まれ。2008年フジテレビ入社、看板アナウンサーとして活躍。’16年、フリーアナウンサーとなり女優としても活動。現在は報道番組『Live News it!』(CX)のメインキャスターを務めるほか、『ホンマでっか!? TV』(CX)にレギュラー出演中。
著書に『会話は、とぎれていい―愛される48のヒント』(文響社刊)。
働き方から生き方、価値観まで、この数ヶ月で大きく変わりました。苦しいこと、つらいこともありました。しかし、これまで凝り固まっていた固定観念や慣習がプラスに変わるきっかけにもなったと思います。毎号の「一流思考のヒント」連載では様々なトップの生き方、仕事を通して得てきた思考をご紹介してきました。多くのトップは大変な時期こそチャンスと捉えてきましたが、今回の特別編では今の逆境に対する考え方を、皆さまに寄稿いただきました。これから私たちは変われるのか、試されている時期だと思います。困難を乗り越えた先には、必ず、世界は良くなると信じて。
[MEN’S EX 2020年8月号の記事を再構成]
撮影/前 康輔、鈴木泰之 スタイリング/後藤仁子〈加藤さん〉