一流のトップは逆境でいかなる言葉と気持ちを大切にし、乗り切ってきたのか。本連載にご登場頂いた方々のなかで、加藤綾子さんの心に特に残っている7名のリーダーたちに今の心得を聞いた。
【加藤綾子の心に響いた 稀代のリーダーたちが贈る 今を乗り切るヒント】
第1回 伊藤忠商事 代表取締役 会長CEO 岡藤正広さんのコトバ
「今日の成果は過去の努力の結果であり、未来はこれからの努力で決まる」
私は努力という言葉が好きです。入社して間もない頃、スランプに陥った時期がありました。同期は受け渡し業務を卒業し営業職に配属されるのに、自分はなかなか先に進めず……。くすぶっていたときに、取引先のベテランの方が私の心を見抜いたのでしょう。ご自身の経験を話してくれました。
「山頂を見るんじゃない。足元の仕事を黙々とこなし、一歩一歩進めていくことが大切。気づけば山は自然と低くなっているものだ」と。大変な苦労をされてきた方です。目から鱗が落ちましたね。
先を見ることも重要ですが、まずは目の前の課題をコツコツこなすのが大事、ということの方が多いと思います。仕事において、また人生においてもそう。そして常に人よりも努力することで人間も企業も右肩上がりの成長を遂げられるのです。
無論、努力の“質”も大切。天才も努力をしなければその才が枯れることがあります。逆に凡人でも努力次第で、ある領域まで到達できるでしょう。色紙の言葉は稲盛和夫さんの言葉ですが、今の時代だからこそ、より胸に響きます。
結果が出るには時間が必要です。私自身、沢山の苦労をしてきました。だからこそ、努力の大切さを実感しています。苦しいときこそ、足元を見て無心でコツコツやる。目の前の努力が将来への布石となるのです。
カトMEMO
- 古い価値観にとらわれず、自らがいいと思ったことを過去にとらわれず積極的に取り入れる姿勢を学ばせてもらった。
- 結果が出るには時間がかかるからこそ、目の前の努力を大切にする。今の時代に必要な考え方。
岡藤正広 Masahiro Okafuji
伊藤忠商事株式会社代表取締役 会長CEO。1949年生まれ。東京大学経済学部を卒業後、1974年に伊藤忠商事に入社。大阪本社を主な拠点に繊維の営業を担当し、世界の有名ブランドの導入に手腕を発揮。常務執行役員・繊維カンパニープレジデントなどを経て、2010年、代表取締役社長に就任。’18年より現職。
加藤綾子 Ayako Kato
1985年埼玉生まれ。2008年フジテレビ入社、看板アナウンサーとして活躍。’16年、フリーアナウンサーとなり女優としても活動。現在は報道番組『Live News it!』(CX)のメインキャスターを務めるほか、『ホンマでっか!? TV』(CX)にレギュラー出演中。
著書に『会話は、とぎれていい―愛される48のヒント』(文響社刊)。
働き方から生き方、価値観まで、この数ヶ月で大きく変わりました。苦しいこと、つらいこともありました。しかし、これまで凝り固まっていた固定観念や慣習がプラスに変わるきっかけにもなったと思います。毎号の「一流思考のヒント」連載では様々なトップの生き方、仕事を通して得てきた思考をご紹介してきました。多くのトップは大変な時期こそチャンスと捉えてきましたが、今回の特別編では今の逆境に対する考え方を、皆さまに寄稿いただきました。これから私たちは変われるのか、試されている時期だと思います。困難を乗り越えた先には、必ず、世界は良くなると信じて。
[MEN’S EX 2020年8月号の記事を再構成]
撮影/前 康輔、鈴木泰之 スタイリング/後藤仁子〈加藤さん〉