ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを連載形式で紹介する新連載「中村アーカイブ」がスタート! 「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第15弾は……?
【中村アーカイブ】 vol.15 /エルベシャプリエのトートバッグ
’90年代前半に購入したトートバッグです。今ではファッションに興味がある人なら知らない人はいないと言えるほど有名な、フランスのバッグブランドの「エルベシャプリエ」。
私がエルベシャプリエを初めて知ったのは、BEAMSが初めて取り扱いを始めた1986年頃まで遡ります。
初めてBEAMSに入ってきたモデルは、ワンショルダーの肩から掛けられる巾着型のバッグでした。フランスブランドらしい綺麗なカラーのナイロンのバッグはスタッフの間で大人気となり、初回の入荷分はほとんどスタッフが買って無くなってしまうほど、スタッフの間で盛り上がったのを今でも覚えています。
当時の日本ではナイロンのバッグと言えばアメリカのブランドのものばかりで、フランスブランドのカジュアルなナイロンバッグというだけで魅力的に感じたものです。その後、日本にも代理店ができ、’80年代後半くらいから正式に輸入されるようになると、BEAMSでもメンズ、ウィメンズともに本格的に展開が始まりました。
’90年代になると日本でも大ブームが起き、舟形のトートバッグやブリーフケース、アメリカ製だったデイパックが大人気となります。丁度その頃、私も毎シーズンパリに出張に行き、エルベシャプリエの本店を毎回リサーチし、その盛り上がりも見ていたので、当時BEAMSのカジュアルで展開していたこの舟形のトートバッグを仕事とプライベート兼用で購入しました。
このバッグは国内、海外の出張や、プライベートでも娘が幼少の頃に旅行などでかなり使っていたので、いわば’90年代にずっと私とともにあったバッグのひとつと言えます。現在もこの舟形のトートバッグは定番モデルとして人気ですが、このバッグを見るたびに’90年代にずっと出張で行っていたパリや家族と過ごした日々を思い出します。
ヘビーローテーションで使っていたので、さすがにくたびれてしまい、今はもう使っていませんが、私にとっては思い出深いフランスブランンドのアーカイブとして残していこうと思っています。