衣装にお国柄が表れた英・米・仏・伊の名作映画から、我々の“永遠”の範となるスーツ&ジャケットのスタイリングをご紹介。併せて、人気の敏腕スタイリストがそれをより今の日本人向けにアレンジした“最旬”の着こなしを指南する。装いの幅を広げたい紳士は必読!
【#おうち時間充実計画】/映画とファッション #08
映画から学ぶ“永遠”とスタイリストから学ぶ“最旬”
『泥棒成金』
『泥棒成金』
かつて「猫」の異名で呼ばれた宝石泥棒ジョン(ケイリー・グラント)。今では足を洗ってリヴィエラの別荘で悠々自適な生活を送っている彼のもとに「猫」を語る偽物が現れたという噂が舞い込んでくる。その正体を暴くためニースへとやってきたジョンは、そこで米国人富豪の娘、フランセス(グレース・ケリー)に出会う。2人のロマンティックな恋模様と、偽物の「猫」を追い詰めるスリリングなストーリーに引き込まれる傑作。1955年公開。
【映画から学ぶ“永遠”】
至極正統なる「ブラックタキシード」
サスペンスの神様と称される傑出した演出力に加え、“最もファッションに精通した映画監督”ともいわれるアルフレッド・ヒッチコック。その真髄を味わえる作品が『泥棒成金』である。
世界有数の高級リゾート地であるリヴィエラを舞台とするだけあり、優雅なクラシックカジュアルのお手本をたっぷりと見ることができるが、対照的に夜のフォーマルスタイルも印象的だ。
華やかなイブニングドレス姿のグレース・ケリー、そして黒のタキシード姿のケイリー・グラント。
米国映画らしく襟はショールカラー、そして少し斜めに傾かせた控えめなチーフ使いが特徴的で、抑制美の中に洗練が薫る絶妙なバランスを見せる。それをあくまで自然に着こなすケイリーが素晴らしい。まさしく王道を極めた佇まい、と言えるだろう。
【スタイリストから学ぶ日本的品格の“最旬”】
色も素材も形も「カジュアル進化のタキシード」
フォーマルウェアであるタキシードは本来、生地やディテールに厳格な規定が設けられているが、昨今はそれに囚われない新しい形のタキシードも増えてきていると話す四方さん。
「なかでも、リネンやシアサッカーなど夏ならではの洒脱さを備えたものに注目しています。右は全身を茶系で統一して優雅なリゾート調を意識。一方でディテールも素材もイージーな左の一着は、カットソーでさらりと合わせました。どちらにも言えるのは、あくまでドレスマインドを保つこと。スカーフやルームシューズなど、寛ぎつつ品のある小物を活用しましょう」(四方さん)。
AZABU TALOR / 麻布テーラー
品格とともに色気も醸し出すブラウンリネンタキシード
リゾートイメージなブラウンリネンとフォーマルなタキシードのコントラストが新鮮な一着。ラペルやポケットの玉縁、パンツの側章など随所に配された黒が効き、風格と色気を感じさせる佇まいになっている。ナチュラルなシワ感が表情豊かな生地は英国ハリソンズ製。11万5000円〈オーダー価格〉(Y&Mプレスルーム
TAGLIATORE / タリアトーレ
ドレスダウンがサマになる軽快シアサッカー
コットンシアサッカーで仕立てられたこちらは、見た目も着心地も伝統的タキシードより格段に軽やか。タリアトーレお得意のビッグラペルに加え、センターベントやエラスティックウエストのパンツなど、様々な要素がミックスされている。着こなしも固定観念に囚われず、自由な感覚で装いたい。12万5000円(トレメッツォ)
スタイリスト 四方 章敬さん
1982年生まれ。武内雅英氏に師事した後、独立。本誌をはじめ多くのメンズファッション誌で活躍する実力者だ。控えめでエレガントなスタイリングが信条。
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[MEN’S EX 2020年5月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)