綿谷 寛画伯のコンサバお洒落歳時記

ただ流行を追いかけるだけでなく、１年を通して季節の旬なアイテムや行事の楽しみ方を知っている。そんな男性こそ真に成熟した、紳士といえるだろう。粋な趣味人を目指すため、四季で味わいたいモノ・コトを季題に取りあげた、お洒落の歳時記を画伯が紹介する。

絵と文・綿谷 寛

今月のお題　ピクニック

いやマイッタね。新型コロナウイルス感染拡大ですっかり出鼻をくじかれた2020年春。

この時期、卒業式に送別会、花見や旅行など、イベント行事が目白押しだっつーのに、人が集まるとこはあれもこれも中止、自粛、延期。国は不要不急の集まりを控えるように呼びかけてるけど、不要不急って何？　えっ、重要ではなく、急ぎの用事でもないこと？　あらら、それってコンサバお洒落歳時記のことじゃないですか。

ま、そうはいっても不要不急に限って一番楽しかったりするワケで、それがまったくなかったら毎日がギスギスして精神衛生上よろしくない。要は人混みを避けて家族や友人、恋人と身近なレジャーを楽しむ分には何ら問題はないはず。ならば、今月は日光浴を兼ねてピクニックで春を満喫してみてはいかがだろう。

ピクニックというと、まずイメージするのは籐を編んだ籠の中に食器や水筒をセットした英国製のお洒落なバスケット（これを英国ではハンパーという）かと思うが、ピクニックという風習が生まれたのは17世紀フランスで、その語源もフランス語のPique-nique（何かしら持ちよって食事をするという意味が含まれる）に由来する。

ピクニックが英国に伝わったのは18世紀に入ってからのことで、当初は上流階級の社交として郊外の邸宅にゲストを招くスタイルだったが、産業革命以降庶民へと広まっていき、現在のような公園や郊外で食事を楽しむピクニックとなった。

ピクニックに特に決まりはないが、料理は冷めてもおいしく食べられるモノ（サンドイッチやおにぎり、弁当など）が基本。これが目的地で調理器具を使って煮たり焼いたりする料理になるとピクニックじゃなくてデイキャンプになっちゃう。飲み物は水筒や魔法瓶に入れて、あとは目的地に着いたらピクニックシートを広げ、用意した食べ物や飲み物を並べればピクニックの始まり始まり～。

とまあ、じつに手軽でカンタンなのだが、それ故に手を抜こうと思えばいくらでも手抜きができるし、凝りだしたらきりがない。

フランス発英国育ちの
ピクニックを米国流に楽しむ

ボクはというと、若いころは４人分の食器がセットされた見た目も豪華な英国製の籐のバスケットをクルマに積んで出かけたものだが、昼酒が何よりも贅沢と考える今は、バスケットを手に公共交通機関で移動となるので、’90年代にアメリカから取り寄せたL.L.ビーンの木製のバスケット（一番上のイラスト）に軽くて割れないプラスチックの食器をセットしようかな。

そうそう、担当編集のHくんからアメリカ土産で頂いたロブスターとカニのピクニック絵皿がイーストコースト風で気分だ。そうなると格好も英国調というよりアメトラだな。今ならラグビージャージやエンブロイダリートラウザーズ。あるいはポロベアのコットンセーターなんてのもピクニックシーンにピッタシかも。

日中はポカポカ陽気でも日が陰るとまだまだ肌寒いこの時期。ブランケットも必須だね。使わないときはクルクルッと巻いてレザーホルダーにセットするキャリータイプ。これ、女子ウケ間違いナシ！って一体誰とピクニックに出かけるつもり!?　ウイルスでなくとも人混みを避けたい今日この頃。