前回の記事で、私は「完全自動運転」という言葉を用いた。これこそ、多くの人々が考える「本来の意味での自動運転」というべきものだが、具体的にどのような機能を指すのか、少し考えてみよう。
第二回 自動車好きじゃなくても気になる「自動運転」の最新事情
「完全自動運転」というからには、運転操作はすべてクルマ任せで、ドライバーは基本的になにもしなくてもいいことになる。人間がすべきことといえば、目的地の入力くらい。あとは一般道だろうと高速道路だろうとすべてクルマが自動操作。横断歩道で歩行者が待っていれば、その人が通り過ぎるまで横断歩道の手前で停止するとともに、交差点では信号を読み取るだけでなく他の交通を検知して優先順位を判断し、譲るべきは譲って自分の順番がやってきたら前に進む。もちろん、あらかじめ設定されたルートにしたがって交差点を右左折する必要があるほか、高速道路ではインターチェンジでの流入や流出をこなし、ランプでは必要に応じて路線を変更し、遅いクルマがいたら追い越し、速いクルマがきたら道を譲らなければいけない。
ここまで読んで「そんなの絶対に実現できるはずがない」と思われた方もいるだろう。「高速道路はまだしも、市街地の交通は複雑すぎて機械には対応できない」と……。実は、最初に述べた「完全自動運転」はいつでもどこでもクルマが人に頼ることなく全自動で運転を行うもので、専門家たちはこれを「レベル5の自動運転」と呼んでいる。いっぽう、難易度の高い市街地は諦めて高速道路など特定の場所のみ全自動運転を実現したものを「レベル4の自動運転」と呼ぶ。
では、「レベル3の自動運転」とはなにか? もしも不完全な自動運転システムであれば、市街地だろうと高速道路だろうと機械が対応しきれない状況が存在する。そんなときに「あと30秒で自動運転は停止するので、その後はドライバーが自分で運転してください」と白旗を揚げるのがレベル3。いま、数多くの自動車メーカーが実用化を目指しているのが、このレベル3である。
そして現時点で実用化されているのがレベル2。これは自動運転ではなく、「安全運転支援システム」などと呼ばれる。要は、運転の主役はあくまでも人間で、機械はハンドル、アクセルペダル、ブレーキペダルの操作を補助するだけ。具体的には、アクティブレーンキーピングやアダプティブクルーズコントロールと呼ばれる装備が、これに相当する。