メンズファッション業界にはお洒落なだけでなく、とても個性的な生き方をしている人がたくさんいる。この連載では、いま注目の業界人のファッション履歴を通じ、各人の人間的な魅力に迫ってみたい。
第十四回 渡辺産業 代表 渡辺鮮彦さん
Profile
渡辺鮮彦(わたなべよしひこ)さん/渡辺産業 代表
1954年、京都生まれ。家業が繊維の輸入であったため、物心がついた頃から西洋の文化に触れて育つ。中学生時代にVANと出会い、アイビーファッションを愛好。高校卒業後、上智大学に進学し、大学生のときには体育会ヨット部で活躍する。大学卒業後は外資系コンピュータ会社に就職したのち、25歳で家業である渡辺産業に入社。37歳から現職。58歳で2年間、青山学院大学大学院に通いMBAを取得。2013年より英国ブランドに特化した直営店「ブリティッシュメイド」を運営。
ブリティッシュメイド公式サイト:https://www.british-made.jp/
漂う雰囲気はジェントルマンそのもの
取材に訪れると、タイドアップに品良くジーンズをコーディネイトした、スラリとした男性が現れた。この方がグレンロイヤルやジョセフ チーニー、ドレイクスなどの総輸入代理店や、英国に特化したショップ「ブリティッシュメイド」の運営で知られる渡辺産業の代表・渡辺鮮彦さんである。にこやかな表情だけでなく、社員の方への接し方を見ていても、実に物腰が穏やか、かつ丁寧。これぞ真のジェントルマンと思わせる身のこなしが印象に残る。
聞けば、渡辺さんは京都で生まれ、間もなくすると東京へ転居。ついで4〜5歳の頃、ご病気だった妹さんの療養のため、家族で千葉県の東京に隣接するエリアへ引っ越した。
ご本人によると、幼少期は外で遊ぶのが好きで、原っぱを駆け回り、ザリガニやカエルを捕まえる、わんぱくな子供だったそうだ。
「当時の千葉県はすごくのんびりしたところでしたよ。霜柱ってありますよね。昔は道が舗装されていなかったので、冬場に霜柱が持ち上げた土の上を歩くのが好きでした」。
その一方で名作全集や、理科の本、様々な図鑑を飽きることなく読みふけるような読書家の一面もあった。