新しい時代を前にして「あなたにとって、スーツとは?」
俳優 中井貴一さん

着れば素敵に働ける普段着であるべきもの
「世代的にひとつ繰り上がった感覚がありますね。昭和、平成に続いて三つの時代を生きた俳優・中井貴一と将来言われるのかも(笑)」
創刊当初から表紙や連載企画『好貴心』など、折に触れM.E.にご登場頂いてきた中井貴一さんに時代の変わり目の気分を訊ねたら、まずはそんな言葉が返ってきた。
「新元号以上に、時代の変化を感じる場面は多いですね。スマートスピーカーが登場したり、銀行の店頭もAI化が進もうとしていたり……。そんな時代だからこそ、より人間力が問われるのでは」
そんな時代のスーツやいかに?
「基本的にスーツって労働着でしょう?昔の日本では、映画界でも助監督までスーツにネクタイで『よーい、スタート!』とやっていた。当時は既製品が少なく、オーダーで作っていた人たちのこだわりがあって、それを普通に着ていたのがカッコ良かった。今やIT企業なら格好もラフでいいし、いつのまにかスーツは堅苦しい”よそ行き”にされてしまって。でも、日常の労働着だからこそ、遊び心を加えてオシャレをすることに意味がある。いいものを普段使いすることがカッコいいわけで、時代が変わってもスーツは素敵に働ける仕事着であり続けて欲しい」
そんな中井さんが今、着たいスーツとは?
「大振りなチェックのスーツで、遊び心があって、でもフォーマル感もある、そういう気分かな。今日のブリオーニのスーツのストイックなコーディネートも大好きです。一見地味でも、見栄えとしては一番際立つ感じ。スーツは決まり事があるからこそ、いろいろ遊びたくなる。年齢を重ねると『こうあるべきだ』みたいなものが薄れて、いい意味で”いい加減”になって心が解き放たれていく。人間が男として、女として、諦めたときにファッションを置いていく感じがするんです。歳を取るほど、ファッションに興味を持ち続けることが、生き物として正解なような気がしますね。だからスーツも着たいと思い続けることが大事」
Profile
俳優 中井貴一さん
1961年東京都生まれ。’81年『連合艦隊』で映画デビュー以降、第一線で活躍。芸能界きってのファッショニスタでもある。本誌の不定期連載『好貴心』も大好評。9月13日に映画『記憶にございません!』が公開予定。
※表示価格は税抜き
[MEN’S EX 2019年5月号の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)