コラム:これがスピーゴラのシューズだ(写真7枚)
いまでは海外でもスピーゴラは評判に
現在は海外でオーダー会も行われ、スピーゴラは好評を博している。初の海外進出はいまから6〜7年前に香港のセレクトショップ、アーモリーでのオーダー会。お店の人が来日して、スピーゴラで靴を作ったのがきっかけだ。ついでニューヨーク、シンガポール、ハワイ、上海と、たちまちオーダー会のために世界各地を飛び回る忙しさとなった。
「海外は体力を使いますがおもしろい。たとえば、ハワイはLAに住んでいる俳優がオーダーにいらしたりもします。おもしろいし、靴のおかげで世界中に行くことができてラッキーです。現地の人たちと知り合えるのは靴のおかげ。世界中で、オーダー靴は共通言語なんです。靴を介して会話ができるのがいいなと思います」。

一番苦労したことは?への意外な回答
笑顔を絶やさない、朗らかな方なのでインタビューは実にスムーズ。そんな鈴木さんの人柄を表す、会話があった。「これまでに一番苦労したことは?」と聞いてみたのだ。
「苦労したことですか? うーん……うーん。思いあたらない……ですね(笑)」。
靴作りに携わって20年以上経ち、独立してから10数年が経過しているにもかかわらず、鈴木さんには苦労がないという返答にはびっくり。おそらく他の人にとって苦労と思えることも、彼にとってはさして苦痛に思わないのだろうと感じた。今の成功は鈴木さんのポジティブな性格があればこそに違いない。

「海外に行くことが増えた一方で、忙しさのあまり、サンプルを作る時間も確保できなくなってきました。もう一度、モノづくりに向き合って、集中する時間を増やしたいと思っています」と語る鈴木さん。
日本における高級靴ブームを黎明期から盛り上げて、いまや彼の活動の場は海外にまで広がっている。今後はどんな展開を見せるのか。鈴木さんの活躍から、まだまだ目が離せない。
※この記事は前編・後編にわけてお送りしました。
撮影/中村光明(トライアウト) 取材・文/川田剛史