
加藤お客様と接しているときに、相手の心を読むコツというのはあるんでしょうか?
阿部コツはありません。ただ、読もうという意識はすごく強く持っていて「本当はこの人は何が言いたいんだろう」「はっきり言わないけれど、何をしてほしいんだろうか」ということを常に考えています。相手の言葉だけで物事を捉えると間違ってしまうこともあって、態度や表情、周囲の人まで、とにかく見ることが大事です。
加藤経験がないと、まさに言葉だけをそのまま受け取ってしまいそうです。
阿部若いコンシェルジュには「違和感を大事にしましょう」と言っています。やりとりの中で「何かが変だな」というときは必ず立ち止まる。あと「絵にして考えましょう」とも言っていて、例えばお客様が5年前に行ったレストランにまた行きたいけど名前を覚えていないという場合、赤い屋根だったとか、こんな料理があったとか、お客様が思い描いていることを頭の中で絵にするんです。そうすると言葉だけで答えを探すより、間違いにくくなる。人との対話、特にホテルのようにグローバルなコミュニケーションになってくると、英語ができるとかできないとかだけの話でもないのです。
加藤教育という点で他に留意していることはありますか?
阿部答えを伝えてしまうより、自分で気付くような設定をするようにしています。どんな人でもやりなさいと言われたことより、自らやりたいと思った方が一生懸命になりますから。
加藤教育においても相手をよく見るわけですね。
阿部コンシェルジュになる前にソニーの創業者である故・井深 大さんが”豊かな大人を育てるにはどうしたらいいか”という目的で創設した親子関係の研究所のようなところ(※財団法人幼児開発協会、現在の公益財団法人ソニー教育財団)で働いた経験も大きいと思っています。よく「赤ん坊は泣くのが仕事」と言いますが、訴えたいことがあるから泣いているわけで、やはりよく見れば理由がわかります。あとお母さんが「やりなさい」「これはやっちゃいけません」と伝えたところで、子どもは言うことを聞いてくれない。「できるかな」「やってくれるよね」と投げかけることで、自発的にやってくれる。そこは大人も全く一緒だなと。
加藤伝え方で気をつけていることは他にもありますか?
阿部相手を主語にすることです。例えば「私たちがレストランを予約しました」より「あなたのレストランの予約はできています」と伝えた方が「お客様のことを私たちは一番大事に考えています」という気持ちが伝わりますよね。
加藤例えば5年前にお客様が行ったレストランの名前にたどり着けなかったり閉店していたりする場合、どう伝えるんでしょうか?
阿部ないものはないと伝えなければなりませんが、「ありません」「できません」という否定文だけで終わらせないで、必ず代案を考えて提案します。ただ、いきなりそれを伝えてもお客様は気分が付いてこられない場合があるので、まず「楽しみにしていらっしゃったのに、私も残念です」と”あなたに共感している”という姿勢を伝えることで、代案を聞いてもらえる気分を作るようにしています。
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