「リーダーたちの本とメガネ」門崎 千葉祐士氏

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リーダーたちの本とメガネ

リーダーとしてビジネスを牽引する男たちが愛読する本&愛用するメガネ。そこには日々、厳しい競争の中で奮闘する彼らの思考法やビジネス哲学が宿っている。

千葉 祐士氏

Profile

株式会社 門崎
代表取締役 千葉 祐士氏

1971年生まれ。岩手県一関市出身。生家が牛の目利きを家業にしていたことから「一関と東京を食で繋ぐ」ことをビジョンに掲げ、’99年4月、「焼肉屋 五代格之進」を創業。その後、2008年に株式会社 門崎を設立し、現在は東京・六本木を中心に16店舗を展開するほか「全日本・食学会」の分科会「肉肉学会」を主宰し、肉の可能性を探求。著書『熟成・希少部位・塊焼き日本の宝・和牛の真髄を食らい尽くす』を持つ。


肉をこよなく愛する男の不動の信念を探る

「革命児」という言葉があるが、食の世界で言えば、千葉祐士氏は間違いなくその一人だろう。

時代の変化に伴う畜産農家の減少によって国産牛の高騰が深刻化する中、日本ではそれまで常識とされてきたA5和牛の”最高級神話”に反旗を翻し、熟成肉を打ち出すことで店舗を拡大。今日の熟成肉ブームの火付け役となった。

また、近ごろ話題の「牡蠣肉」についてもそうだ。アメリカのステーキハウスでは、ロブスターとステーキを盛り合わせた”サーフ&ターフ”というメニューをよく見かけるが、「牡蠣肉」は言うなれば”和製サーフ&ターフ”。この新感覚の融合をいち早く開発したのも、千葉氏その人である。

何をするにせよ、新しいことを始めるのは勇気がいることだ。とかく常識的な考えに支配されがちな世の中で前例がないことをやるのはリスクを伴うが、千葉氏は果敢に挑戦し続けてきた。一体、そのエネルギーの源泉はどこにあるのだろう。実際、ご本人に訊ねて みると、彼は「私のメンターが書いた本なんです」と言いながら、一冊の本を手に取った。その本とは、島地勝彦氏の著作『神々にえこひいきされた男たち』だった。

島地勝彦氏は”出版業界が生んだ怪物”と称される人物だ。『週刊プレイボーイ』を100万部雑誌に育て上げ、その交遊録には文壇、政界、実業界、スポーツ界、美術界の大物たちが勢揃いする。『神々にえこひいきされた男たち』にはそんな各界の著名人を魅了する島地氏のウィットとエスプリが軽快な文章で綴られているのだが、その魅力について千葉氏は言う。

「島地さんはこの本の中で人を惹きつける3つの条件を指摘しています。それというのは、『美しい』『面白い』『珍しい』。これらを意識してコンテンツを作っていた、だから売れたんだ、と。そして、こうも語っています。俺たちは雑誌を作っているんじゃない、文化を作っているんだ。既存の文化を踏襲するんじゃない、新しい文化を生み出すんだ、って。私はその話が腑に落ちました。なぜなら私の活動が、まさにそうだからです」

言われてみれば、確かにそうだ。冒頭で記しているように、千葉氏が実践してきたことは”イノベーション”と呼ぶに相応しい。

「世の中は人間の概念で出来上がった”バーチャル”。その概念の渦に巻き込まれないで自分はどうやっていくのか、この世にどうありたいか、という考えを持つことは非常に重要。そんな発想を島地さんは私に示唆してくれたんです」

そして、もう一人、千葉氏にはリスペクトする人物がいる。その人物とは、島地勝彦氏の前述の著書の序文を書いている菅原正二氏だ。若い頃からジャズに心酔し、早稲田大学在学中はバンドマスター・ドラマーとして活躍。卒業後も東京でプロプレイヤーとして演奏を続けていたが、その後、地元である岩手県一関市に戻り、自宅の蔵を改築してジャズ喫茶「ベイシー」を開店した。その店は日本ジャズ界のスターたちをはじめ、全国津々浦々のジャズファンの憩いの場となっている。

「菅原さんはレコードを『かける』とは言わないで『演奏する』と表現します。音に向き合い、針やアンプのタイプ、スピーカーとの配線の距離にまでこだわるんです。一番凄いのは、自分がかけたいものをかけるのではなく、お客さんを見ながら、店の空気を最適化するような曲を選ぶところ。私もそうでありたい。何しろ熟成肉というものは繊細なんです。肉の個体差によって熟成時間や熟成環境をコントロールしなければ、最高の状態でお客様に届けることはできません。だから、その都度、徹底的に掘り下げる必要がある。菅原さんが著した『聴く鏡』には、随所に丁寧な物の考え方がちりばめられていて心から共感できます」

そして、千葉氏は語調を強めて言った。「どんなに金儲けになったとしても、心が悦ぶようなことでなければつまらない」と。

「そうじゃなければ、ただのルーティンになってしまうでしょ? ルーティンじゃ心は満たされない。枠を壊して新しい価値を作らないと。ワクワクは大切です」

そうして、千葉氏はおもむろにメガネを指で押し上げた。実に特徴的な丸メガネだ。

「私を語る上ではこのメガネも重要。もともと印象が薄い人間なので、自分を如何に味付けするかを常に考えているのですが、その結果、スクエアなタイプから丸メガネに替え、さらにサスペンダーと帽子を愛用するようになりました」

千葉氏は自らを「肉おじさん」と表する。「肉博士」や「肉教授」と言っても過言ではない見識を持ちながら、親しみを与えることで、人々を肉に惹きつけようとしているそうだが、どうやら、その戦略は功を奏しているようである。

「記憶に残る」を念頭においたフレーム選び

現在、千葉氏が所有しているメガネのほとんどはラウンドフォルム。以前はスクエアのものを掛けることが多かったそうだが、「肉おじさん」とご自身を称する際にラウンドのものに変えたのだそう。

「やはりこちらの方が印象に残りますし、人も良く見られます。まさに肉おじさんですね(笑)」(千葉氏)


BOOK

2人の著者が示唆してくれたのは
“常識に染まらず、己の道を究める”

GLASS

ビジネスを円滑に進めるために
己の顔を記号化するツール


GLASS

GLASS
Brand:JACQUES MARIE MAGE / Frame Type:Round / Color:Black

そのボリューム感とデザインに一目惚れ

ボリューム感たっぷりのフレームはアメリカ・LA発のブランド、ジャック・マリー・マージュのもの。購入のきっかけは「MEN’S EXでひと目で気に入って。すぐお店に行ったのですが既に売り切れ。半年ほど待って購入できたのですが、その甲斐はありました」(千葉氏)



[MEN’S EX2018年07月号の記事を再構成]
撮影/岡田ナツ子 取材・文/甘利美緒 イラスト/佐藤 剛

<strong>神々にえこひいきされた男たち / 島地勝彦</strong><br />『週刊プレイボーイ』などの編集長を歴任し、現在はコラムニスト兼バーマンとして活躍する著者が、女、食、酒、仕事、本、映画について縦横無尽に綴ったエッセイ集。

神々にえこひいきされた男たち / 島地勝彦
『週刊プレイボーイ』などの編集長を歴任し、現在はコラムニスト兼バーマンとして活躍する著者が、女、食、酒、仕事、本、映画について縦横無尽に綴ったエッセイ集。

<strong>聴く鏡 / 菅原正二</strong><br />全国からファンが集う伝説のジャズ喫茶「ベイシー」の店主によるエッセイ集。テーマはジャズとオーディオだが、示唆に富んだ人生論も展開されている。

聴く鏡 / 菅原正二
全国からファンが集う伝説のジャズ喫茶「ベイシー」の店主によるエッセイ集。テーマはジャズとオーディオだが、示唆に富んだ人生論も展開されている。

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