「リーダーたちの本とメガネ」ローランド・ベルガー会長 遠藤 功氏

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リーダーたちの本とメガネ

選ぶには理由がある。そこにその人となりを読み解くヒントが隠れている。リーダーとしてビジネスを牽引する男たちが愛読する本&愛用するメガネから厳しい競争の中で奮闘する彼らの思考法やビジネス哲学に迫る。

遠藤 功氏

Profile

ローランド・ベルガー会長
遠藤 功氏

早稲田大学商学部卒業後、三菱電機、米国系戦略コンサルティング・ファームを経て、2000年、ローランド・ベルガーに参画、現在に至る。同社のグローバルのスーパーバイザリーボード(経営監視委員会)のメンバーにアジア人として初めて選出される(2006-2011年)。米国ボストンカレッジ経営大学院MBA取得。早稲田大学ビジネススクールの教授を務めた経験を持つ(2004-2016年)。


経営コンサルタントは言葉で自己主張するべし

第一印象を決める顔の、最も目立つところに位置するメガネを選ぶにあたって、自己主張するデザインのものを採用するか否かについてはそもそも意見が分かれるのではないかと思う。もちろんそれはTPOでも左右されるだろうが、約30年間、コンサルティング業界に身を置き、現在は欧州系最大の経営コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長を務める遠藤 功氏は、その職務に則って控えめなタイプを身に着けるようにしてきたという。

「コンサルタントとは、企業などから相談を受けて経営状態を分析し、経営強化のための提案やアドバイスを行う職業。話を聞いてもらって初めて成立するため、相手の目にネガティブに映ることは、極力、排除しておきたいわけです。しかも、ビジネスの相手となるのはほとんどが経営者。大体が自分にとって人生の先輩にあたるので、同じ目線でお話しさせていただくには、外見は尖っているより落ち着いているほうが無難。昨今、ストライプのシャツなどが一般的になっていますが、だとしても白シャツを纏うという具合に。メガネについても同様で、あくまで機能性を重視し、デザイン的にはなるべく地味なものを選ぶ。真に優秀なコンサルタントは言葉で自己主張すればいい。見た目で目立つのは私の美学に反します」

そう断言する遠藤氏の顔には皇族や政財界の要人からも厚く支持される「ハマモト」のメガネが収まっている。チタン製のそれは驚くほど軽く、技術力の高さを窺わせるが、聞けば、どうやらこの一本は遠藤氏にとって”ささやかな冒険”でもあったようだ。

「べっ甲柄のフレームには長らく憧れていましたが、先ほどお話ししたように、若かりし頃は悪目立ちになるのではないかと購入を控えていたんです。でも、私も還暦を過ぎ、それ相応のキャリアを積んできた。そろそろ少しくらいは遊び心を交えてもよかろうと、思い切って手に入れました。私は数社の社外取締役を務めており、たびたび会議に出席します。そんなとき、このメガネはコミュニケーションの潤滑油になる。もしかすると、これからは装いに隙を作るくらいが丁度いいのかもしれません」

メガネはリアリティで、本はロマンで選ぶ

さて、次は遠藤氏が愛読する本について。コンサルタントは常に自分の頭でモノを考えることが求められる職業ゆえ、自己研鑽のために読書は欠かせない。事実、遠藤氏もひと月に30冊もの本を手に取り、移動の際に読み進めるそうだが、「愛読書は?」との問いかけに対しては『サハラてくてく記』というタイトルの本を取り出して、 愉快そうに笑った。

「リヤカーに荷物を積んでサハラ砂漠を横断する実録。正直、馬鹿げたことを! と思いましたが、人間賛歌というのかな、こんな生き方もあっていいのだとしみじみさせられた。ビジネス書も話題のものは片っ端から読みつつ、プライベートではもっぱら旅行記などのノンフィクション。自分がいかに狭い世界で生きているかということを思い知らされる。メガネはリアリティで選ばざるを得ませんが、本についてはロマンを追求したいですね」

そして、最後に、ノンフィクションの魅力をこんなふうに語ってくれた。

「ノンフィクションには現在進行形の”今”が活き活きと描かれている。私は”現場力”こそが大事であるという信念を持っています。自ら現場に赴き、そこで起きていること、行われていることを観察し、聴き、感じる。一方、加工した情報は簡単に見透かされます。ネットで二次情報や三次情報が蔓延している現代においては、説得力のある一次情報こそが価値を持つのだと思いますね」

BOOK

就寝前に旅行記を読んで
自らをリセットしています


数々のビジネス書を著している遠藤氏だが、プライベートでは旅行記を愛読。約80冊を所蔵し、一日の締めくくりにその頁をめくるという。
「日常的に思考する仕事柄、そのスイッチを意識してオフにすることが大切。旅行記は読むほどに私を非日常的な世界へと誘ってくれるので非常に重宝しています」

GLASS

軽くて、存在感を消す
ことを最優先しました


GLASS
HAMAMOTO
Brand:HAMAMOTO / Frame Type:Square / Country:Japan

遠藤氏が、目下、愛用するメガネは「ハマモト」のもの。日本が世界に誇るメガネの産地・福井県鯖江を拠点とし、金属加工の技術で高い評価を受ける浜本テクニカルが打ち出すアイウェアブランドで、チタン製のメガネについては「掛けているのを忘れてしまうほどの軽い掛け心地」とお気に入りの様子だ。



[MEN’S EX2018年02月号の記事を再構成]
撮影/岡田ナツ子 取材・文/甘利美緒 イラスト/佐藤 剛

『サハラてくてく記—リヤカーマン アフリカ大陸横断11,000キロ』 永瀬忠志

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『未承認国家に行ってきた』嵐 よういち

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『日本ボロ宿紀行』上明戸 聡

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2024

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