ファッションリサイクル「たんぽぽハウス」を服飾評論家・池田哲也さんが語る【後編】

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池田哲也さんの私物のネクタイ

前回、ファッション評論家の池田哲也さんに密着し、ファッションリサイクルのヴァンベール/たんぽぽハウス 西葛西本店で買い物の様子を拝見した。今回はヴァンベール/たんぽぽハウスでの買い物を通じて池田さんが入手した私物を披露していただいた。ネクタイを中心に、あっと驚くアイテムまで、豊富なアーカイブに取材班も驚かされることに。

関連記事:服飾評論家・池田哲也さんに密着! ファッションリサイクルからお宝は見つかるか?【前編】

Profile
池田哲也さん

ファッション評論家。学生時代にインポートカジュアルのショップにてアルバイトを開始。社会人になると三越へ入社し、ローマ支局勤務を経て帰国。ファッション評論家の一方、ピザ職人としての顔を持ち、東京・森下のイタリア料理店ベッラ ナポリのオーナーでもある。

まず、登場したのはブランド名のない、手編みと思しきカーディガンだ。タグを見るとイタリア製であることは間違いない。我々には何の変哲もない地味なカーディガンにしか見えないのに、これが池田さんにとっては衝撃的な一着だったというから、おもしろい。何がすごいかわからないので、詳しく聞いてみることに。

ごく一部ではあるがヴィンテージタイを拝見した。(左から)日本製の生地を使っていると池田さんが鑑定した英国のセイヤー&セイヤー。ウンガロのタイは緩みにくいクレープ生地を採用している。小紋柄でやや太めなのがハロルド パウエルのタイ。個性たっぷりの右端のタイはイタリアの老舗ブランドのもの。

ごく一部ではあるがヴィンテージタイを拝見した。(左から)日本製の生地を使っていると池田さんが鑑定した英国のセイヤー&セイヤー。ウンガロのタイは緩みにくいクレープ生地を採用している。小紋柄でやや太めなのがハロルド パウエルのタイ。個性たっぷりの右端のタイはイタリアの老舗ブランドのもの。

(左から)ヴァレンティノ・ガラヴァーニ、マリオ・ヴァレンティーノ、ブランド名不明

(左から)ヴァレンティノ・ガラヴァーニ、マリオ・ヴァレンティーノ、ブランド名不明

イタリア老舗ブランドのヴィンテージタイを絞めた様子。「芯地と仕立てで表情が生まれるのが締めると分かります。生地と芯地の組み合わせ方、シェイプがとても推敲されていて、このタイはすごいと思う」。

イタリア老舗ブランドのヴィンテージタイを絞めた様子。「芯地と仕立てで表情が生まれるのが締めると分かります。生地と芯地の組み合わせ方、シェイプがとても推敲されていて、このタイはすごいと思う」。

ジャンフランコ・フェレのタイ。細やかな幾何学模様が特徴だ。

ジャンフランコ・フェレのタイ。細やかな幾何学模様が特徴だ。

セイヤー&セイヤーのナロータイ。タグには「BOND ST, LONDON」と「MADE IN ENGLAND」の表示がある。「コレクションのなかで一番すごいタイです。日本の生地を使っていますね。プラザ合意以前は日本のシルク生地産業は海外に進出して評価されていたのです。プラザ合意(※)で日本の競争力が失われて、製糸工場の多くが廃止に追い込まれました」<smart>※1985年に日本を含む先進5か国で行われた、ドル高是正に向けた国際会議。合意の影響で日本は急激に円高が進み、輸出力が弱まった。</smart>

セイヤー&セイヤーのナロータイ。タグには「BOND ST, LONDON」と「MADE IN ENGLAND」の表示がある。「コレクションのなかで一番すごいタイです。日本の生地を使っていますね。プラザ合意以前は日本のシルク生地産業は海外に進出して評価されていたのです。プラザ合意(※)で日本の競争力が失われて、製糸工場の多くが廃止に追い込まれました」※1985年に日本を含む先進5か国で行われた、ドル高是正に向けた国際会議。合意の影響で日本は急激に円高が進み、輸出力が弱まった。

イタリアの老舗ブランドのタイは非常に凝った生地を使っている。先述のマリオ・ヴァレンティーノのタイ同様に、決まった位置に柄を載せる贅沢な生地使い。さらに、ブランドのモノグラムが織り柄でさりげなく全体に散りばめられている。織りと染めを駆使した点を、池田さんは高く評価。

イタリアの老舗ブランドのタイは非常に凝った生地を使っている。先述のマリオ・ヴァレンティーノのタイ同様に、決まった位置に柄を載せる贅沢な生地使い。さらに、ブランドのモノグラムが織り柄でさりげなく全体に散りばめられている。織りと染めを駆使した点を、池田さんは高く評価。

1970年代から80年代に掛けて、一世を風靡したアイテムにミラ・ショーンのタイがあげられる。意図的にネクタイの縁を無地の枠にして柄を囲む意匠は当時の人気定番だった。「柄にシルクスクリーンのよさが出ています。生地を贅沢に使っていて、仕立てにも正確さが求められます」。残念ながら、左のものは酷使されたらしく、芯地がズレて縁が太くなっている。

1970年代から80年代に掛けて、一世を風靡したアイテムにミラ・ショーンのタイがあげられる。意図的にネクタイの縁を無地の枠にして柄を囲む意匠は当時の人気定番だった。「柄にシルクスクリーンのよさが出ています。生地を贅沢に使っていて、仕立てにも正確さが求められます」。残念ながら、左のものは酷使されたらしく、芯地がズレて縁が太くなっている。

ヴァレンティノ・ガラヴァーニのヴィンテージタイ。目を凝らすと一番幅の太い部分の左寄りに控えめに入ったロゴが見える。つまり、これも採算を気にせず、ロゴが定位置にくるよう生地を贅沢に使ったものなのだ。

ヴァレンティノ・ガラヴァーニのヴィンテージタイ。目を凝らすと一番幅の太い部分の左寄りに控えめに入ったロゴが見える。つまり、これも採算を気にせず、ロゴが定位置にくるよう生地を贅沢に使ったものなのだ。

ライニングがなかったため、1050円で購入した英国老舗のコート。「英国老舗のコートは、年代、サイズに関わらず、見つけたら買うようにしています」。

ライニングがなかったため、1050円で購入した英国老舗のコート。「英国老舗のコートは、年代、サイズに関わらず、見つけたら買うようにしています」。

新品未使用のボノーラ。「2000円くらいだったかな? 90年代初めごろのものでしょうか。今はこういう良い革がありませんよね。サイズは38で小さすぎました。自分のサイズだったとしても履きはしないけれど、置物として持っておきたい」。

新品未使用のボノーラ。「2000円くらいだったかな? 90年代初めごろのものでしょうか。今はこういう良い革がありませんよね。サイズは38で小さすぎました。自分のサイズだったとしても履きはしないけれど、置物として持っておきたい」。

英国調を得意とする日本の某テーラーのスーツ。ハリソンズの生地を使ったスリーピースが1050円。「生地と仕立てがいい。ベストも毛芯を使用しています。きっとオーダー価格は楽々と20万円を越えていたでしょう。あまり着た形跡がなくて、パンツもキレイな状態です」。

英国調を得意とする日本の某テーラーのスーツ。ハリソンズの生地を使ったスリーピースが1050円。「生地と仕立てがいい。ベストも毛芯を使用しています。きっとオーダー価格は楽々と20万円を越えていたでしょう。あまり着た形跡がなくて、パンツもキレイな状態です」。

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