価格でも、速さでもない
エグゼクティブがラグジュアリーカーを選ぶ20の理由
高価であること。速いこと。豪華であること。もちろん、それもラグジュアリーカーを形づくる要素だ。
けれど、一台を選ぶ理由はそれだけではない。受け継がれてきた歴史、遠くまで走りたくなる心地よさ、自分だけのために仕立てる愉しみ、名車に宿る希少性や来歴。そして、そのクルマだからこそ出会える特別な体験や文化まで。何を買うかではなく、何を理由に選ぶのか。
エグゼクティブのための、いまのラグジュアリーカー選びを20の視点から考える。
【IV】ONE-OFF ないものなら、つくる
(14)奥山清行が考える世界に一台という究極
ラグジュアリーカーの究極を突き詰めていくと、既製の選択肢から選ぶのではなく、自分のためだけの一台をつくるという領域に行き着く。デザイン、素材、仕立て、そして走りまで。すべてに自らの価値観を反映できることは、単なる希少性とは違う。世界に一台しか存在しないという事実そのものが、クルマを所有する意味を特別なものへと変えてくれる。
“モダン・シンプル・タイムレス”という奥山氏の哲学を、細部まで貫いたKode89。余計な装飾を排したクリーンな造形だからこそ、プロポーションや面の美しさが際立つ。時間が経ても古びない、普遍性を目指したデザインだ。
自分のためだけに生まれる一台がある
「現代の消費財は、機能性を重視して消費される『非所有』のものと、人生を豊かにし、世代を超えて受け継がれる『所有』のものへと二極化しています」と奥山氏は話す。では、真のラグジュアリーとは何か。
「高価な日用品や、利益を優先して過剰生産に走るブランドではありません。購入後も価値が落ちず、長期的な所有欲を満たしてくれるものです」。
奥山氏が例に挙げるのが、エルメスや虎屋のように、職人技と歴史的価値を未来へ残していく姿勢だ。その考えをクルマという形で体現するのがKEN OKUYAMA CARS のKode89。
既製のスーパーカーを選ぶのではなく、自分だけの一台を生み出す。世界に一台という希少性だけでなく、長く所有し続けたいと思わせる価値まで備えてこそ、ワンオフカーには意味があるという。
さらに奥山氏は、日本の価値を世界に示すためには、ブランドの哲学を深く理解し、共感する顧客に届けることも重要だという。
「時には、ルールを守らない人には提供しないという、ある種の敷居の高さも必要です。私たちが提供すべきなのは、便利なだけの道具や、単に価格が高いだけの物ではありません。その物を通じてお客様に“豊かな旅”をしてもらい、人生の豊かな経験そのものを届けることです」。
その考え方こそ、奥山氏がクルマづくりを通して示そうとしている、真のラグジュアリーの姿なのである。
[MEN’S EX Autumn 2026の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)





