俳優・中井貴一がハワイに憧れた理由とは?

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中井貴一さん
オアフ島には、カイルアやラニカイなど、世界屈指と言われるビーチが点在する。中でもよりローカル色が強く、知る人ぞ知る穴場の絶景ビーチが東沿岸にある「ワイマナロビーチ」だ。澄んだ空に真っ白な砂浜、エメラルドグリーンの海。「この景色を見ると、また絶対ハワイに帰って来たくなる」と中井さん。

【中井貴一の好貴心】vol.8《愛すべき、ハワイのこと》

さて、今回、次号とワイハです。失礼、ハワイです。
本屋に立ち寄ると、多くの女性誌、旅の本を含め、特集記事が一年を通して出ていないことはないのではないだろうか……、と思うほどハ・ワ・イの三文字は、よく見かけます。
果たして、その魅力とは何なのでしょうか。
実は、私もその魅力の虜になってしまった一人でもあるのですが……。
まずは、約40年前のファーストハワイの記憶をたどってみたいと思います。
あの頃の日本人ってこんなんだったな、と我ながら感慨にふけってしまいそうです。

初めての飛行機、初めての海外、すべてが幻のようだった

初めてハワイを訪れたのは、約40年前……。40年前か。この連載を始めてから、過去の記憶をたどり、年数、年号を書くたび、当然のことながら、年を重ねたことに驚愕。頭の中は、小学生のあの頃とあまり変わっていないのに……。

さて、本題。時は小学5年生。その頃は海外に行けるなんてことは頭の中にも微塵もなく、新幹線に乗れることでさえ、人生の大イベント。我が家がどのような経緯で、ハワイに行くことになったかは、幼すぎて定かではないが、当時、親しくお付き合いさせて頂いていたご家族にお誘いを受け、初海外旅行と相なった。しかし当時はハワイと言われても今ほどの情報はなく、旅行本を見てもワイキキビーチから見るダイヤモンドヘッドの写真ばかり。子どもの私には、腰越から見る江ノ島とダブってしかたがなかった。だったら、鎌倉で十分ではないか……という話だが。とにかく親から聞かされるのは、天国のような所で、一年中夏だということ。今思えば親も情報がなく、無難で漠然とした説明をするのが精一杯だったのだろう。

現在もそうだと思うのだが、小学校の頃「将来なりたいものは何ですか?」という質問をよくされた。最近は、プロスポーツ選手、医者、教員、公務員など、小学生なりのきちんとした根拠の上になりたった、ある意味、将来を見据えた現実的な職種が並ぶらしい。しかし我々の頃は、クラスの男子5?6名は総理大臣、あとの大多数がパイロットと答えたものだ。総理と答えた子どもは、日本で一番偉くてお金持ちになれそうだから、パイロットと答えた子どもは、カッコいいから、飛行機に乗れるからという理由であった。どちらかというと、我らの少年期の方が、子どもらしく単純で、「夢」らしかったのかもしれない。

そんな子どもたちにとって、飛行機に乗り海外に行くなんてことは、今の子ども達が、スペースシャトルに乗り宇宙へ行くのと同等の、喜びと、ドキドキと、期待と夢があった。しかし実は我々子どもにとっては、行き先がハワイであろうと、どこであろうとよかったのだ。飛行機に乗れることが最も自慢であり、嬉しく幸せな出来事だった。

因みに、私の夢は植木屋さん。理由は植木屋さんの腰につけた鋏が、ウエスタン映画でジョン・ウエインがつけていた拳銃のホルダーと似ていたこと。我が家に来てくれていた植木屋さんのお弁当に憧れたこと……、であった。

当時はまだ、成田空港が出来る前。利用するのは、羽田空港。”家を出て、家に帰るまでが遠足です”という言葉そのままに、羽田に向かう時から夢の様な時間が始まっていた。街灯に照らされた環状8号線が、既に滑走路のように感じられた。乗り込みはタラップ。これも憧れのひとつ。この階段をゆっくり踏みしめながら機内へ。最近、海外へ行く時は出来るだけ通路側の席を選ぶが、この時は窓側の席を死守。夜出発なので眠いはずなのに、寝るのがもったいない。飛行機が動き出し、離陸するまでの1秒たりとも見逃したくないと、必死に睡魔と戦っていた。

当時はツアーでの渡航が当たり前。胸につけた大きなツアー名の入ったバッジさえも、勲章の様に思えていた。親に日付変更線を越えると言われ、機内の窓から必死で線らしきものを探していたのは、私だけだったのだろうか。

飛行機に乗れて、時差が大変で、外人さんばっかりいて、暖かくて、ハナウマベイの珊瑚が痛くて……
それが”ファーストハワイ”の思い出。

2024

VOL.341

Spring

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