工芸の町、金沢に根付いた国立工芸館の今

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日本全国 アートと自然を愛でる癒やしの絶景美術館

心地よい空間や美しい景色のもと、思い思いにアートと向かい合う。美術館を訪ねる目的はさまざまだが、非日常感を味わいながら、心を癒やし、明日への活力をチャージする場所として美術館を楽しんでいるかたも多いことだろう。本特集では展示作品はもちろんのこと、そのロケーションや建物も一体となってアートを堪能でき、心癒やされる美術館を全国各地で探した。ご紹介する美術館は季節を問わず、いつ訪ねても、その時ならではの魅力がある。「いつか訪ねたい場所」として、まずはこちらでの美術館散歩をお楽しみあれ。

建築もアートな美術館へ

工芸の街・金沢で鮮やかによみがえった明治建築

美術館のシンボルとなる建物そのものが、アートとして一見の価値あり、と注目されるスポットが増えている。地元で時を刻んできた建物が匠の手で再生されたり、新たにできた建築が地域に活気をもたらすきっかけとなったり……。全国各地、個性豊かな建築が話題の美術館へご案内しよう。


石川・金沢
国立工芸館

工芸の街・金沢で鮮やかによみがえった明治建築

国立工芸館
緑の窓枠と白壁のコントラストがまぶしい旧陸軍金沢偕行社。管理棟として使用されている(現在は非公開)。左側が展示棟となる旧陸軍第九師団司令部庁舎。異なるデザインの瓦葺き屋根など比較しながら明治の建築意匠を見ることができる。

藩政期からの伝統的建造物が並び、石川県立美術館や金沢21世紀美術館など数々の文化施設が集積する「兼六園周辺文化の森」エリアに、2020年10月、工芸の粋を集めた「国立工芸館」が東京から移転開館した。それから約4年が経ち、地元の人々の期待に応えるように地域を代表する美術館となった。近代工芸の殿堂ともいえる作品が工芸の盛んな街・金沢で鑑賞できるのはもちろん、明治期の陸軍施設を移築・活用した建築の美しさを堪能できるのも魅力だ。

旧陸軍金沢偕行社(かいこうしゃ)と旧陸軍第九師団司令部庁舎の2棟から構成される国立工芸館。一度の曳家(ひきや)や移築を経ての移築復元となるが、まず目を引くのが正面右手、1909(明治42)年に陸軍の将校クラブとして建てられた金沢偕行社。緑の窓枠、2階上部のアーチ窓、横方向の部材を多く入れて水平線を強調するなど華やかなバロック風の意匠だ。床下換気口に施された旧陸軍の五芒星(星形)装飾など細部も再現され、当時の建築の特徴が見られる。

一方、1898(明治31)年に金沢城内に建てられた第九師団司令部庁舎は、こげ茶と白のシックな色調で簡素なルネサンス風の外観。玄関、欅(けやき)造りの階段、師団長室などの木造部分が移築整備されている。両翼にあたる部分は、前の移築の際に撤去されてしまったが、このたび鉄筋コンクリート造りとして復元され、その部分が展示室となっている。両建物とも解体工事の際に、建築当初の色が判明。復元前は窓枠が薄桃色や灰色だったが、こげ茶と緑という元々の色彩を忠実に再現し、当時の面影を今に伝えている。

明治期の木材を組み立て直した階段
明治期の木材を組み立て直した階段。欅(けやき)造りの手すりは、長年にわたって磨かれてきた独特の艶がある。

国立工芸館
移転前の工芸館(旧近衛師団司令部庁舎)のシャンデリアを参考に復元。
(右)中川衛《金銀象嵌「翡翠置物」》(左)金子 潤《無題 13-09-04》
(右)特別展「心象工芸展」出品作より中川衛《金銀象嵌(ぞうがん)「翡翠(ひすい)置物」》 2017年 作家蔵 撮影:野村知也。その他、漆芸家・松田権六の工房の移築・復元展示やデジタル鑑賞システム、アートライブラリ、ミュージアムショップを設置。(左)入り口のガラス越しに目に飛び込んでくるのは高さ3メートルを超える陶磁作品、金子 潤《無題 13-09-04》。

国立工芸館

住所:石川県金沢市出羽町3-2
TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9時30分~17時30分(最終入館は閉館30分前)
休館日:月曜、展示替期間、年末年始
料金:観覧料は展覧会によって異なる。
● 12月1日まで特別展「心象工芸展」を開催中。

美術館の開館時間、休館日、展示期間、展示内容等は変更になる場合あり。お出かけ前に美術館の公式ホームページ等をご確認ください。

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