2022年に刊行された『世界一わかりやすい 腕時計のしくみ』の第2弾として、「複雑時計編」が発売となった。本書ではここ数年ブームが続いている複雑時計に絞って、その魅力的な機能や難解に動く「しくみ」を、とにかくわかりやすく解説。奥が深いさまざまな複雑機構のしくみをご紹介しよう。
複雑時計はこの時計師から始まった
〜アブラアン‐ルイ・ブレゲ〜
ブレゲの創業者、アブラアン-ルイ・ブレゲは、時計の進化を2世紀進めたと称賛される天才だった。1775年、パリのシテ島に開いた彼の工房では、数々の複雑機構が発明され、また革新されてきた。初代ブレゲなくして、複雑時計は語れない。
【ブレゲの発明】1780
ペルペチュエル
アブラアン-ルイ・ブレゲによる初の特許は、自動巻き機構だった。彼以前にも何人かの時計師が自動巻き機構を試みたが、実用に至ったのは、このペルペチュエルが最初。今のような回転式のローターではなく、分銅が揺れる力を利用し、ゼンマイを巻き上げるしくみだった。
世界初の実用的自動巻き機構
【ブレゲの発明】1783
リピーター用ゴング
時刻を音で知らせるリピーターは初代ブレゲ以前からあった。その音源は内側から叩く裏蓋か、内部に備わる小さな鐘のいずれかだった。前者は音色が悪く、後者は時計が大きくなる。そこで初代ブレゲは鋼線をリング状に丸めたゴングを考案。美しい音色と携帯性を両立した。
美しい音色を奏でるリング状のゴング
【ブレゲの発明】1795
ブレゲひげゼンマイ
テンプの動きに応じて伸縮し、振動を促すひげゼンマイは、単なる螺旋状では同心円状に展開せず偏心する。これが精度に悪影響を及ぼすと考えた初代ブレゲは、ひげゼンマイの外側終端を上に持ち上げ、内側に曲げることで偏心を解決した。今も高級時計で採用される大発明だ。
精度を向上させる特殊な終端カーブ