職人の技とセンスとロマンの結晶
コートこそ、仕立て服の真骨頂だ!
“仕立て服の魅力っていうのは実はコートにこそあるんだよね” 数多のオーダーを経験したツウたちと話していると、このような意見を聞くことが結構多い。その理由、そして失敗しないコートのオーダー方法について、大人気テーラーのチッチオに伺った。
“オーダーコートには作り手の個性が色濃く表れます”
Profile
Noriyuki Ueki
リングヂャケットを経てナポリへ渡り、ダルクォーレとアントニオ パスカリエッロのもとで修業。帰国後2008年に開業し、2010年に青山でサルトリアを開いた。
Q. コートがビスポーク服の真骨頂といわれる理由は?
A. 製法上で特別なことはないのですが、定型がほぼ決まっているスーツやジャケットと比べて、コートは表現の幅が広い。ディテールに関しても、ラペルやポケットなどの形を比較的自由にデザインできます。ですので、テーラーごとの個性が出やすいといえますね。コートがビスポークの真骨頂といわれるとしたら、そのあたりが理由ではないでしょうか。
Q. いいコートの見分け方は?
A. 私の考えでは、基本的にジャケットと一緒です。襟がノボり、肩にかけてなだらかにつながっていること。これによって着心地も美観もよくなります。コートはジャケットに比べて襟が後ろで抜けやすいので、そのあたりは特に入念に作りますね。ジャケットの襟が後ろから見えないくらいノボっていれば理想的です。
Q. コートをオーダーする際に注意すべきことは?
A. もしご贔屓にされているテーラーがあるなら、コートもそこでお仕立てになることをまず検討してみてください。コートは基本的に、ジャケットの上から着る想定で仕立てます。ちょうどジャケットをぴったりと包み込むようにフィッティングを作り込んでいくわけです。ですから、ご自身の型紙を既に持っているテーラーで注文すると、アームホールなど見えないところまでフィッティングの精度を上げられるのです。
Q. 生地選びで気をつけることは?
A. 颯爽と裾をなびかせて歩くイメージでしたら目付け400g台後半程度、重厚な格式を演出したいなら500g台後半くらいを選ぶのがよいでしょう。800g以上になると相当重く感じるので、あまりおすすめはしません。色柄に関しては好みでお選びいただいて結構ですが、当店ではやはり無地が人気ですね。チェスターコートなら、ビーバーとよばれる毛足のあるものが定番で、飽きもこないのでおすすめです。
上木氏が進める、コート生地の名作はコレ!
Harrisons of Edinburgh
グレーカシミア
目付け570gのカシミア100%生地は、どっしりと格調高いコートを仕立てたい人向け。毛足のあるビーバータイプでラグジュアリー感も高い生地だ。
Loro Piana
ヘリンボーンカシミア
目付490gのカシミア100%は軽快な印象。ブラウンと黒のヘリンボーン織りはファッショナブルな主張もあり、少しヒネった服が欲しいときに好適だ。
Lovat
ツイード
チッチオでは「マニカ フォルケッタ」コートでよく選ばれるというツイード。こうした渋い色みはイタリアのマエストロたちにも好まれるものだ。
Fox Brothers
カバートクロス
「マニカ フォルケッタ」コート用にもうひとつ人気なのがカバートクロス。骨太な風合いがカジュアル感のあるコートを引き立てる。目付けは530/550g。
[MEN’S EX Winter 2024の記事を再構成]
※表示価格は税込み。