アウター界の革命的新素材
「Brewed Protein™繊維」を知っているか?
一見、普通糸のように見えるコチラ、羊の毛から採られたウールでも、綿から採られたコットンでもない。その正体のもとは、なんとタンパク質。開発したのは山形県鶴岡市に本社を置く、バイオテクノロジーのベンチャー企業「Spiber(スパイバー)」だ。
2007年の創業以来研究を続け、植物由来の糖類を原料に、独自の発酵(Brewing)プロセスを経て作られるタンパク質素材「Brewed Protein™」を開発した。ブリュード・プロテインとはこの素材を含むポリマーや繊維、フィルムなどの総称で、ブリュード・プロテイン繊維は、ポリマーを紡糸したもの。
製造過程で大量の温室効果ガスを排出するとされるカシミア繊維に比べ、大幅に温室効果ガスの削減が見込め、また土壌や海洋環境を含む多様な環境で分解されるため、石油由来の素材から排出されるマイクロプラスチック課題の解決策としても有効。
今後サスティナブルな服作りに向けて、いま、日本のみならず世界のファッション業界からも注目を集める超革新的素材なのだ。今回は、タンパク質が実際に服になるまでのプロセスの一部をご紹介。
ユーザーニーズに基づいて設計された遺伝子を自動合成するロボット。
本社ラボの小規模な微生物培養装置。
本社に隣接する発酵プロセスのパイロットプラント。設計したDNAを微生物株に導入し、植物由来の糖を与え、発酵させてBrewed Proteinポリマーを生産。
抽出・精製されたBrewed Proteinポリマー(粉末)。
上:Brewed Protein™ポリマーを溶媒に溶かし、 ノズルから押し出して成形される長繊維(フィラメント糸)。シルクのような光沢と繊細さが特徴。これを加工して短繊維や紡績糸にする。下:Brewed Protein™繊維を使用した織り生地サンプル。織り生地はアウターなど、また編み生地はニットやTシャツの素材として活用される。タンパク質繊維としての性質上、カシミアやウールとブレンドすると素材の良さが引き立つ。
Spiber本社は、2001年に慶應義塾大学先端生命科学研究所の誘致・開設を皮切りにSpiberをはじめ多くのベンチャー企業を産出した山形県鶴岡市の地方再生モデル地区「サイエンスパーク」の中にある。こちらはSpiberのオフィス棟に隣接する発酵・精製プロセスを行うパイロットプラントを含むサイエンスパークの空中写真。
「リジェネラティブ・サークル(REGENERATIVE CIRCLE)」をコンセプトに、Brewed Protein™繊維を次世代への革新素材として実用性の確立を目指したコレクション。ゴールドウインの3LMacCoat(左)や、ウールリッチのFuture Arctic Parka(右)の表地にも採用。これらのアイテムは、丸の内で開催中のPOP UP STOREでも見ることが出来る。(下記参照)
「REGENERATIVE CIRCLE」POP UP STORE
住所:東京都千代田区丸の内2-4-1 丸の内ビルディング 1F
TEL:03-6259-1360
営業時間:11時~21時(平日・土曜)/11時~20時(日祝)
2024年1月下旬まで開催中
展開ブランド:ゴールドウイン、ザ・ノース・フェイス、ナナミカ、ウールリッチ
[MEN’S EX Winter 2024の記事を再構成]