リングヂャケット奧野さんが見て・触れて・感動した「ナポリに息づく職人文化」とは

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リングヂャケットのディレクター奥野剛史が
イタリアのモノ作りを自らの言葉で語る

奥野剛史のナポリ手記バナー

人の手でしか作れないモノがある。細部にこだわることで生まれる品質がある。時代を超えて受け継がれる熟練技で、この世に二つとないモノを届けてくれるナポリの職人たち。彼の地に息づくモノ作りの現場を、リングヂャケットの奥野剛史さんが案内してくれた。


「手縫いの味わいを追い求めナポリの工房に辿り着いた」

地元の人しか通らない路地裏
賑やかな大通りから奥へ入っていくと、洗濯物がはためき、地元の人しか通らない路地裏に出る。少し危険な香りがする薄暗い通りからは想像もできないが、ナポリ随一の職人たちの工房が軒を連ねている。

手縫いの部分をつかんで「fatto a mano!」(ハンドメイドだぜ)と言い放ち、ニヤリと笑う。さっきまで寡黙で強面だった職人のおじさんが、服作りの話をし出すと止まらない。そんな光景を何度見てきただろうか。手仕事による服作りが未だ色濃く残る街、ナポリ。洗濯物がはためく路地裏に凄腕の職人が営む工房が軒を連ねる。観光客が全く通らない辺鄙な場所だが、世界中のちょっと一癖ある服好きたちを虜にするモノ作りの聖地だ。

リングヂャケットは1954年の創業以来、メイド・イン・ジャパンにこだわって、スーツやジャケットを作ってきた。長年、アメリカ、イギリス、イタリア、と世界中の服を研究する中で出会ったのがナポリの服。柔らかく返ったラペル、生地に沈み込んだハンドステッチの跡など、手仕事を多用したアジのある服は、世界中のどんな服にもない魅力を備えていた。それから、追いつけ追い越せとナポリの服を何十年も研究しつつ、独自のエッセンスを加えたジャケットを開発していったが、そんな上着に合わせるシャツがないことにふと気が付いた。

ナポリならではのハンドを駆使したシャツこそが、ウチのジャケットに合うシャツだ。そう思い立ってナポリでオリジナルシャツを製作するようになってから既に10年以上が経つ。手作業工程を経て作られた、柔らかくアジのあるシャツはたちまち顧客の心を掴むことに。服好きのお客様や社員からの熱望もあり、今ではパンツ、タイ、コートと、徐々に展開が広がってきている。やはり「ナポリ」には何か得体のしれない魅力があるのだ。

ナポリの海

ナポリの歴史は、侵略と統治の繰り返しであった。紀元前6世紀ギリシャの植民都市ネアポリスとしての統治から始まり、フランス、スペインなど、様々な国に統治されてきたことがナポリ独特の文化を形成した。これまで良いことずくめのように書いてきたが、実はそうでもない。いや、かなり問題が多いと言っても差し支えないだろう。ナポリの人達は、陽気でマイペース、そしていい加減(良い加減!?)で、皆一様に我が強い。喧嘩になることも日常茶飯事。しかし、言い合いになったと思えば翌日にはケロッとしている。

北イタリアの友人には「よくあんなやつらと付き合っていられるな」、なんて言われる始末(笑)。幾度となくトラブルになって、今度こそ本当に止めてやる、と思いながら、かれこれ10年以上も同じことを繰り返している。何故かって?だって、できあがってくる商品が最高に格好良いのだ。憎めない、愛すべきナポレターノとそのモノ作り。そんな、一度ハマってしまうと抜け出せない深淵なる“ナポリ沼”の世界をのぞいてみてはいかがだろうか。


奥野剛史さん

Profile
奥野剛史
リングヂャケット ディレクター

「職人技・他にない・唯一」と聞くと居ても立っても居られない偏愛型洋服屋。ナポリの職人技が大好物。



[MEN’S EX Spring 2023の記事を再構成](スタッフクレジットは本誌に記載)

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