時代を造ったクルマたち vol.12
フェラーリ・ロードカーの系譜で大きな意味をもつ存在
フェラーリ456GTは昨年、生誕30周年を迎えた。V12を搭載した2+2フェラーリは地味な存在のように思える節もあるが、現在に至るフェラーリ・ロードカーの系譜において大きな意味をもった存在でもあった。フェラーリのコアユーザーたる富裕層にとって街中での使用に堪える実用的かつスタイリッシュなモデルであり、プロサングエに相通ずるフェラーリGTの原点を感じる。
スタイリングはピニンファリーナが担当し、豊かな曲線を活かしたエレガントなデザインが特徴だ。シャーシは400系から大きくモディファイされ、アルミやコンポジット材によるボディパーツも積極的に取り入れられた。エンジンは新開発65°V12(5474cc)ドライサンプ仕様が採用され、リアにトランスミッションとLSDを置くトランスアクスルレイアウトであった。このF116Bエンジンやドライブトレインのレイアウト等は、これ以降に誕生するV12モデルのベースとなった。
400系と比較して100mmホイールベースが短縮されたにもかかわらず、キャビンは2+2として妥当なスペースを備え、大柄な顧客でもゆったりとしたドライビングを楽しむことができた。コノリーレザーを採用したラグジュアリーなインテリアも大きな特徴だ。
1996年には4速トルコンATが採用された456GTAが追加され、1998年には各部に改良を加えられた456M GT/456M GTAへと進化し、生産終了となる2003年までに3000台以上のセールスを記録した。
ちなみに、Mのスタイリングは当時、ピニンファリーナへ入社してまもない奥山清行が担当した。456GTはクラシック・フェラーリのモチーフを活かしつつ、モダンでラグジュアリーなテイストにまとめ上げたエレガントなスタイリングでマーケットから高く評価された。ルーフからリアエンドに向けてのプロポーションも2+2モデルとしては、きわめてシャープである。