TIMELESS ICONS
一流メゾンの「一生アイコン」物語
創業から長い歴史を持ち、世界中から一流メゾンと称されるラグジュアリーブランドには、長年愛され続けるアイコン的存在がある。そんな「一生アイコン」の、誕生から未来へ向かうストーリー。
[Chaîne d’Ancre]HERMÈS(エルメスの[シェーヌ・ダンクル])
普遍の“錨の鎖”は素材やジェンダーを超えて愛され続ける。
エルメスを語るにはお馴染みのシルクスカーフ「カレ」や大定番の革鞄「サック・ア・デペッシュ」などが欠かせないが、もうひとつ、シルバージュエリー「シェーヌ・ダンクル」の存在も見逃せない。
創業者のティエリ・エルメスは自身の馬具工房をパリに立ち上げ、2代目のシャルル=エミール・エルメスはパリ第一号店となるフォーブル・サントノーレ24番地にブティックを開店、3代目のエミール・エルメスは馬具だけでなく革製品やシルクなど製品展開を広げ、4代目社長のロベール・デュマがエルメスの世界をさらに発展させた。
そのひとつが、エルメスで初となったシルバーだけで作られたジュエリーの誕生であった。インスピレーションの源となったのは、ロベール・デュマが1937年にノルマンディのリゾート地で海岸を散歩していたとき、ふと目にした船を係留させていた錨の鎖。シンプルな鎖の、普遍的につながっていくシルエットと機能美に惹かれた彼は、翌年の1938年に「シェーヌ・ダンクル」と名付けたシルバーのブレスレットを発表した。まさに1837年にエルメスが高級馬具工房として創業してから100年後、メゾンは乗馬の世界から、海や船といった航海の世界に視野を広げていったのだ。
「シェーヌ・ダンクル」の発案者であるロベール・デュマのポートレート。他にもメゾンを代表するシルクスカーフ“カレ”を広めるなど、メゾンの急成長に貢献。
「シェーヌ・ダンクル」が、日頃あまりアクセサリーを着けないという人すら惹きつけるのは何故か。それはこのシルバージュエリーの、シンプルでありながらエレガントで、アンダーステイトメントな美しさにある。ある人はビスポークスーツに、またある人は洗いざらしの白シャツに、またある人は秋色のカーディガンに。金属同士の奏でる響きの心地良さに加え、重すぎず軽すぎず自然な存在感で、着ける人それぞれのスタイルに控え目にそっと寄り添う。「オードランジュ ヴェルト」の香りや、近年登場したメイク用品「エルメス・プラン・エア」同様、人の魅力を自然に引き立てる力は、エルメスに共通のものなのだろう。
「シェーヌ・ダンクル」はその後ジュエリーの世界を飛び出し、バッグや革小物、ホームウェア、カシミア製品など多岐にわたるアイテムに広がりを見せている。それは、この“錨の鎖”が誕生から80年を超えても脈々と続くジェンダーレスで普遍のアイコンである証なのだ。
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エルメスジャポン TEL 03-3569-3300
[MEN’S EX Autumn 2022の記事を再構成]
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