赤峰幸生さん初の写真集に学ぶ「美しい暮らし」5つの秘訣

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赤峰さん写真集

真のクラシックを追求し、服のみならず食・住・遊・知の全域にわたって“美しい暮らし”を実践する赤峰幸生さん。M.E.でも古くからの御意見番としてお馴染みだが、近年はYoutubeやInstagramでも精力的な発信を行い、その論に感銘を受けた若者たちから熱烈な支持を受けているという。ファッションの価値転換が進み、トレンドやスペックに空疎さを感じてしまう今だからこそ、いつの時代も変わらず貫き通してきたアカミネイズムがかつてないほどの輝きを放っているのだ。

齢78にして絶頂期の真っ只中。そんな赤峰さんが、今年初となる写真集を発表した。氏が半生をかけて磨き上げてきた美学の集大成となる、必見の一冊である。本稿ではその内容を抜粋して、赤峰的“美しい暮らし”の5ヶ条をご紹介しよう。

赤峰幸生の暮しっく
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これ一冊にクラシックの本質を凝縮

10月28日に発売される『赤峰幸生の暮しっく』。赤峰さんが日本各地で過ごす春夏秋冬の装いを収めたビジュアル・ストーリーを主軸としつつ、ウン10年ものの希少なヴィンテージウェアや氏の半生を振り返るクロニクル、座右の書なども収録。アカミネイズムのすべてを凝縮した渾身の一冊だ。編集・撮影・執筆など制作全般を担当したのは、今年自身のWEBメディア「ぼくのおじさん」を立ち上げた編集者・山下英介さん。インディペンデントな体制で作られた作品だからこそ、濃厚極まる内容に仕上がっている。総ページ数は280という大ボリューム。資料的価値も高い一冊だ。

1.装いは、流行よりも“自然”に学べ

流行よりも“自然”に学べ

「朝起きたら、まず窓を開けて外の景色を眺めてみてください」と赤峰さんは話す。その日の空は何色か。陽光輝く快晴か、雲の垂れ込める曇天か。春の草木には何色の花が咲いているか。夏の緑はどれほど青々としているか。秋にはどんな実を結んでいるか。冬の道端に積もる落ち葉を見て何を思うのか。自然は美の宝庫であり、装いの極意は自然にこそ学ぶべき。会ったこともないファッショニスタのスナップ写真より、自分の眼前に広がる自然のほうがよほど鮮烈なインスピレーションになる。これが赤峰流・装いの極意である。紫の花をつけたアザミとコーディネートした赤峰さんのVゾーンを見てほしい。なんとも爽やかで嫌味のない色使いではないだろうか。写真集の中には、ほかにも四季折々の風景に想を得た装いが登場する。

「私は朝5時には起床して、多摩川沿いを散歩しています。そこで目にする風景が、装いや創作に大きな意欲をもたらしてくれるんです」と赤峰さん。美意識に磨きをかけたければ、頑張って早起きしてみよう。

2.服の醍醐味は“ぼろぼろ”になってから

醍醐味は“ぼろぼろ”になってから

赤峰さんの話を聞いていると、「このスーツは30年前に仕立てたもので……」といった発言が毎回のように出てくる。かといって氏は、神経質なまでに洋服の傷みを気にしたり、こまめにメンテナンスをするようなタイプではない。靴は必要以上に磨かないし、お気に入りのリネンスーツにパスタのソースがはねてもクヨクヨと気にしない。氏が大定番にしているグレーフランネルのスーツは、毛が抜けてストライプが薄くなってきたころからが一番格好いいと話す。服は“ぼろぼろ”になってこそ美しい。50年以上前のものだという写真のニット(詳細は写真集にて)を見れば、その意味がよく理解できるだろう。

もちろん、ぼろぼろになるまで着られる服はすべからく上質でなければならない。お手入れにはさほど頓着しない赤峰氏だが、いい生地・いい仕立てには徹底的にこだわる。自ら世界のファブリックメーカーを訪ねて別注生地を製作するファッションディレクターは、世界広しといえどもそうはいないだろう。いいものを長く着る。そんな当たり前を何十年も貫いている赤峰さんの姿は実に眩しい。

3.正しく食べ、正しく装え

正しく食べ、正しく装え

高級スーツを着てカップラーメンをすする歪なファッション好きに対して、赤峰さんはかねてから苦言を呈してきた。クラシックの本質は生き様や暮らし方の中にこそ表れるもので、いくら服装だけこだわっても本当の粋には永遠に辿り着けないという論である。写真集の中では「あなたは土鍋でごはんが炊けますか?」と題した赤峰的美食論を展開。赤峰さんの幼少期まで遡って食の原体験を振り返りつつ、服作りにも通じる“手間ひまを愛でること”の愉しさを語っている。「30年前の洋服を着られるのも健康あってこそ」とは、氏の実体験から生まれた金言だ。

ファッションのためのファッションに疑問符がつき、ライフスタイルの中での装いに注目が集まる昨今だからこそ、赤峰流に改めて学びたい。

4.“文化”こそ装いの背骨

“文化”こそ装いの背骨

赤峰さんのアトリエである「めだか壮」を訪ねると、膨大な洋服のアーカイブに加えて蔵書の充実ぶりにも驚かされる。映画、アート、歴史、民藝など、ファッション関連以外の書籍が目立つのも特徴的で、それが赤峰流スタイルに大きな影響を与えていることは間違いない。取材時にも、たとえば「ラコステの着こなし方について教えてください」と訊くと、「私にとってラコステの原体験は、20歳のときに見た映画『太陽の下の18歳』で……」という具合に、まずはカルチャーの観点から話が始まる。着こなしは表層的ではいけないということを手ほどきしてくれるのだ。

以前のM.E.で「赤峰さんが考える歴史上のウェルドレッサーBEST5」という取材を行ったところ、ウィンザー公やジャン・コクトーにとともに“清水幾太郎”という人物の名が挙げられた。社会学者として生きた清水は赤峰さんの叔父で、スーツは日本橋の丸善で誂える洒落者だったという。そんな叔父の背中を見て育った赤峰さんにとって、ファッションと文化は切っても切り離せない関係なのだ。

5.“日本人のクラシック”を追求せよ

“日本人のクラシック”を追求せよ

イタリアに居住歴があり、アントニオ・リヴェラーノを無二の友人とする赤峰さん。世間ではしばしば“イタリアン・クラシックの大家”と称されるが、本人に言わせると「私は決してイタリア・マニアではない」と力を込める。事実、スーツはイタリアものを愛好するものの、シャツはシャルべを自身の定番とし、靴はジョンロブやニュー&リングウッドなど英国系が多い。写真で着ているバブアーも、かなり年季がはいった様子だ。しかしながら、それをいわゆる今どきのミックススタイル的な感覚で実践しているのかというとそうでもない。赤峰さんが志向するのは“日本人としてのクラシックスタイル”だ。

「戦争に負ける前の日本には、イギリスを手本とした洋装と日本古来の和装を折衷した装いの文化がありました。それはまさに和魂洋才というべきもので、この精神こそ私が装いの基盤とするものです」と赤峰さんは話す。日本の風土、文化、歴史、総じていえば日本人の暮らし方に照らし合わせて、世界各国の逸品をどう取り入れるか。日本人ならではの美的感覚で、それらをどうモノにするか。いずれにしろ、まずは日本人として地に足のついた暮らしを送ることが大切なのだ。

赤峰さん初の写真集『赤峰幸生の暮しっく』では、これらのトピックをさらに深掘りしたストーリーが語られる。部数限定の出版ゆえ、お早めにチェックされたし。

※表示価格は税込み

2024

VOL.341

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