時計愛好家が語る
一生大定番時計
見る人が見ればわかるそんな控えめな時計がいい
一生愛せる時計とはどういうものかと聞くと、しばし黙考したのち「唯一無二の個性を備えながら過度に主張せず、けっして飽きることない時計」と答えた太田裕康さん。取材時の腕にあったのはオーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」。小ぶりのソリッドなケースが、サルトリア ダルクオーレのスーツにシックに馴染んでいた。レアメタルのタンタルとSSとのコンビで、ムーブメントはクォーツだ。
「これは’92年製で、7年前に購入。当時クォーツのロイヤル オークは手に入れやすかったんです。クォーツだからケースが薄く、シャツの袖と干渉しないのが気に入っています」
これ以外にスーツによく合わせるのがパテック フィリップの「カラトラバ」。自身の生年に近い年代製で、ホワイトゴールドケースだ。
「イエローやピンクゴールドのカラトラバと違い、冠婚葬祭すべてのオケージョンに使えるのがいいですね。ちなみにお気に入りはグレーのフランネルスーツとの合わせ。シンプルな着こなしでも十分主張してくれます」
ともに誰もが羨むモデルでありながら袖口での見映えはあくまで控えめ。業界きってのウェルドレッサーらしい手堅いセンスを感じるチョイスだ。
太田さんの一生定番時計
[1]パテック フィリップの「カラトラバ」(Ref.3425)
「10年ぐらい前、UA創業時の大先輩から、譲り受けたもので、とても大切にしています」
[2]17年前に購入したロレックスの「GMTマスター」
70年製。「知り合い宝飾店にて購入。ベゼルの焼け具合を気に入り、一時はこればかり着用しています」
[3]ジャガー・ルクルトの1950年代製のダイバーズ
20代のときにフランスへ自費で出張に行ったとき、先輩と訪れた時計店にて購入。「どこかの海軍で使われたものらしいのですが、小ぶりなサイズで気張ったところがないのが好きです」
Profile
ソブリン ブランドディレクター
太田裕康さん
1969年生まれ。神奈川県出身。学生時代にユナイテッドアローズ原宿本店にアルバイトとして勤めた後入社。ザ・ソブリンハウスの立ち上げに参画し、店長、バイヤーを経て現職。趣味はフライフィッシング。若い頃から剣道に打ち込み錬士六段。
[MEN’S EX Autumn 2022の記事を再構成]