アーモリーのマーク・チョー氏が特別にリクエスト!「H.モーザー×アーモリー」の限定ウォッチが発売
本格時計ブランドと一流ショップがコラボした限定ウォッチはヴィンテージ市場においてファン垂涎のレアピースとなっているが、本作も数十年後、そんな逸品として語られることになるかもしれない。世界のクラシックファッション好きから絶大な人気を集める「アーモリー」とH.モーザーが、限定のコラボウォッチを発表したのだ。
M.E.でもたびたび紹介しているアーモリーは、香港とニューヨークに計4店舗を構えるメンズウェアショップ。リヴェラーノ&リヴェラーノやリングヂャケット、テーラーケイドなど世界各国の一流ブランドを展開し、クラシックファッション好きなら知らぬ者なしといわれる名店だ。とはいえ現在、メンズウェアショップとスイスの高級機械式時計ブランドがコラボするというのは極めて異例なこと。なにしろモノが極めて高級ゆえ、協業のハードルも大変高いのだ。にもかかわらず製作が叶った理由は、アーモリー共同設立者のマーク・チョー氏とH.モーザーの深い信頼関係ゆえである。
「H.モーザーのCEO・エドゥアルドとは近年、大変親しい関係にあります。クラフツマンシップを根幹に据え、ディテールひとつひとつにもこだわる美意識はアーモリーにも共通するもので、彼らの時計作りには深い共感を覚えていました。そこである日、エドゥアルドにコラボレーションの話を持ちかけてみたところ、ぜひやってみようと快諾をいただいたのです」とマーク・チョー氏は語る。
稀代の洒落者&時計愛好家のマーク・チョー氏がデザインを担当
1983年生まれのマーク・チョー氏は新世代のウェルドレッサーを代表する存在として知られているが、一方で大の本格時計好きとしても有名だ。グランドセイコーの熱心なコレクターであり、パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタン、F.P.ジュルヌなど雲上系も広く所有。最近はA.ランゲ&ゾーネの「リトル ランゲ1」がお気に入りのようだ。ファッションと本格時計にここまで深い造詣がある人物は、世界的に見ても稀有である。何を隠そう、当コラボ作のデザインも氏が手がけたものだ。
「エンデバー・スモールセコンド トータルエクリプス」と名付けられた本作は、非常にミニマルでありながら際立つオーラを宿した独特のデザイン。そのデザイン・インスピレーションは“皆既日食”だとマーク・チョー氏は解説する。
「皆既日食(英語でTotal Eclipse)は太陽・月・地球が一直線に並び、月が太陽を完全に覆い隠す天文現象です。このとき、普段は見えることのない“コロナ”(太陽を覆う大気の最も外側部分)が黄金の輪のように姿を現すのですが、今回のコラボ作ではその光景をイメージしました。象徴的なデザインとなるのが、ベゼルの内側に配したローズゴールドの輪、そして“究極に黒い物質”と称される『ベンタブラック®』の文字盤です。ベンタブラック®とはカーボンナノチューブ(炭素で構成された極小の管状物質)からなるコーティング素材。99.9%以上の可視光を吸収するため、驚くべき“黒さ”を特徴とします。この文字盤の周りをローズゴールドのインナーベゼルで囲むことにより、皆既日食の美しさを表現しました」
加えて、極小のドットによるアワーマーカーにもちょっとした秘密がある。
「これはプリントや植字ではなく、文字盤に孔をうがって表現したものです。下にベンタブラックとは別のプレートが重ねられているため、それが孔から見えているというわけです。ベンタブラック®の層にやや厚みがあるため、角度によってはアワーマーカーが消えたように見えるのが特徴です。時分針にはブレゲ針を選び、スモールセコンドも配してクラシックにまとめました。何もない空間にスモセコが“漂って”いるかのように見えるところが、個人的には大変気に入っています」
さらに、スティール・オン・スティールによるモノトーン版も展開。こちらはより引き締まった印象で、ベンタブラック®の美しい黒さが精悍に引き立っている。
ケース径は現行のH.モーザーで最も小ぶりな38mm。小径を愛好するマーク・チョー氏らしいチョイスで、手首の細い日本人にも嬉しいポイントだ。ムーブメントは手巻きの「HMC327」を搭載。約72時間のパワーリザーブを実現し、シースルーになったケース裏にはインジケーターも備わっている。
争奪戦を避ける新しいシステムで販売
クラシックでありながらモダン、シンプルでいて個性も備えた絶妙なバランスゆえ、ビジネススーツからジーンズにまで幅広くマッチする「エンデバー・スモールセコンド トータルエクリプス」。生産はそれぞれ28本限定で、うち18本ずつをアーモリーで販売する。空前の高級時計ブームといわれる今なら争奪戦は必至……と思えるところだが、マーク・チョー氏は今回、今までにないシステムでの販売方法を取り入れたとのこと。
「昨今の高級時計熱は異常な高まりを見せていて、“早い者勝ち”状態が続いていますが、本作はもっと落ち着いて検討いただけるようにしたかった。そこで、アーモリーでは次のような方法で販売いたします。まず、1月19日から本作のプロダクトサイトを公開します。じっくりご覧いただき、購入をご希望の際は登録していただきます。1週間ほどしたらサイトを閉じ、登録数が在庫を上回った場合は抽選にて販売させていただきます。早い者勝ちではありません」
この方法であれば、少なくとも販売開始と同時にスマホやPCに食らいつき、血眼になってパンク寸前のサイトへアクセスを繰り返す必要はないというわけだ。少しでもフェアな販売を行いたいというマーク・チョー氏の配慮である。
価格は2万5900USドル。値は張るが、間違いなく一生愛用できる一本となるはずだ。
お問い合わせ先
「エンデバー・スモールセコンド トータルエクリプス」プロダクトサイト
※1月19日〜1週間程度の限定オープン
※H.モーザー直営店「NX ONE 銀座」でも購入希望のエントリーを受け付けています。販売方法はアーモリーとは異なりますので、NX ONE銀座へお問い合わせ下さい。
NX ONE GINZA TEL:03‐3573‐7277
https://nxone.h-moser.jp/
文/小曽根広光