ビームスのクリエイティブディレクター、中村達也さんが所有する貴重なお宝服の中から、ウンチク満載なアイテムを紹介する人気連載「中村アーカイブ」。「ベーシックな服もアップデートされていくので、何十年も着続けられる服は意外と少ない」という中村さんだが、自身のファッション史の中で思い出深く、捨てられずに保管してあるアイテムも結構あるのだとか。そんなお宝服の第46弾は……?
【中村アーカイブ】 vol.46 / コンバースのスキッドグリップ
’90年代前半頃に購入しました。大学生の頃はコンバースのジャックパーセルやオールスター、トップサイダーのデッキシューズ、ケッズのチャンピオンオックスフォード、アディダスのスタンスミス、スペルガの2750と様々なスニーカーを履いていました。
私がBEAMSに入社した’80年代半ば頃は、スタッフや渋谷の洋服屋の間ではニューバランスが流行り始めていましたが、自分はボテッとしたラストのランニングシューズの良さが全く理解できず、盛り上がる先輩達を尻目にフレンチアイビーのマストアイテムだったスタンスミスばかり履いていました。
当時は休日もウォークオーバーのホワイトバックスやダーティーバックス、コールハーンのビットローファーやグローブレザーのローファーなど、休日も革靴を履くことが多かったので、スニーカーがそれほど必要でなかったということもありました。
’90年代に入り久しぶりのキャンバスのデッキシューズが履きたくなり、大学生の頃に履いていたトップサイダーのデッキシューズを買おうと思ったのですが、当時のトップサイダーは細身のソラマメ型のラストではなくなり、ワイズのあるコンフォートタイプのラストに変わっていたので候補から外れました。
’80年代の後半にコンバースのCD1というキャンバスデッキをBEAMSで購入していたので、それのネイビーでもいいかなと思ったのですが、’90年代に入るとそのCD1も見かけなくなり、なにかいいものがないかと探していた時にBEAMSの原宿店に入荷してききたのが、このスキッドグリップでした。
トップサイダーのデッキシューズとは随分雰囲気が違いましたが、試着してみると意外と細身に見える独特なバランスが気に入りすぐに購入しました。
スキッドグリップについてほとんど知識がなかったので調べてみると、1940年代にテニスシューズとして販売されたのがルーツだということを知ります。
デッキシューズだと思って購入したものがテニスシューズだったというオチはありましたが、当時はマドラスチェックのプルオーバーのBDにデニムのファイブポケットというのが休日スタイルの定番だったので、その足元はこのスキッドグリップが大活躍しました。
私はスニーカーにそれほど執着心はないので、保管しているアーカイブも数足しか残っていません。その中でもこのスキッドグリップは今また履きたいと思うスニーカーです。
洋服屋が履くこのタイプのスニーカーは現在VANSが絶大な人気ですが、自分は現行品のスキッドグリップを買おうかなと真剣に考えています。
私が持っているアーカイブはMADE IN USA。現行モデルはどこ製かわかりませんが、雰囲気が当時のものと変わらなければいいなと思っています。
ネットではチラホラ見かけますが、サイズや雰囲気を含めて実物を見てみたい、でも展開している店舗もサイズ欠けが続出……。
オリジナルをアーカイブとして保管して、現行品を買おうと思うと売っていないということはよくあること。買えるのかどうかわかりませんが、スキッドグリップは今また履きたいスニーカーである事は間違いありません。